ベネズエラ経済危機、壊滅状態の小児病院
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【5月21日 AFP】8歳のルイジート君が待っている脳腫瘍の手術は、ただでさえ見通しの困難な手術だ。しかも、ここベネズエラでは、病院に薬も機能する機器もほとんどないことが当たり前になってしまっている。
9平方メートルの病室には、生後4か月の女児もいる。女児は巨頭症で、治療には、頭部にたまる水を排出するバルブが必要だが、この病院にはそれがない。結果、たまった水のせいでその頭はバスケットボール大ほどにまで膨れ上がっている。
この狭い病室には9歳のアンソニー君もいる。背中を手術したのだが、病院にも近所の薬局にも清潔な包帯がないために傷口の状態が悪化してしまっている。
ベネズエラの首都カラカス中心部にあるJ・M・デ・ロス・リオス小児病院(J.M. de los Rios Children's Hospital)では、通常なら避けられるはずの多くの病状が、どの病室でも目に飛び込んでくる。ベネズエラは石油埋蔵量が豊富な国であるにもかかわらず、同国の薬剤師団体によると全国の病院や薬局で必要とされている薬や医療器材のうち、入手可能なのはわずか20%に過ぎない状態だという。
食べ物と医薬品の慢性的な不足は、数年にわたって続いている同国の経済危機によってもたらされている。国際社会はこうした状況について、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領に非があるとしている。
医薬品はインターネット通販でも買えるが、使えるのは米ドルのみ。米ドルは収入のつましい家庭では手に入らない。アンソニー君の背中に広がる傷を見つめながら、祖母のマリア・シルバさんは「うちにはドルはない。私たちは切羽詰まっている」と語った。
子どもたちを担当するエドガル・ソティージョ医師は「水ぼうそう、結核、マラリア、疥癬(かいせん)といった患者を診ている。病院には水がないときもある。患者が感染症にかかった場合、抗生物質もなく、状態は悪化するばかりだ」と語った。