交尾のし過ぎで知られる豪の有袋類2種、絶滅の危機に
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【5月15日 AFP】長時間にわたる交尾の後に雄が死んでしまう有袋類の動物2種が、オーストラリアの絶滅危惧種リストに掲載された。研究者らは15日、この動物たちを救うのは時間との闘いであるとして警鐘を鳴らした。
2013年に発見され、クイーンズランド(Queensland)州の比較的標高が高い湿った場所に生息するアンテキヌス「black-tailed dusky antechinus」と「silver-headed antechinus」の2種は、最大14時間も交尾を続けるなど、自殺行為的な交尾を繰り広げる習性で知られている。
気候変動や生息地の消失、野生化した外来種の存在も2種の存続を脅かしており、研究者らはまもなく死滅する恐れがあると懸念している。
クイーンズランド工科大学(Queensland University of Technology)の哺乳類学者、アンドリュー・ベイカー(Andrew Baker)氏は、アンテキヌスの激しい交尾について、「死に物狂いで次から次へと相手を変えて交尾しようとする。交尾自体が数時間にわたって続くため、疲労困憊(こんぱい)する」と話した。
ベイカー氏はAFPに対し、雄は年に1度、冬の終わりの2週間に迎える繁殖期のうちに「間違いなく完全に健康な状態」から、「眼前でぼろぼろになり果てる」と説明した。
雄は交尾をする雌にしがみつこうとしたり、ライバルの雄を撃退したりしながら交尾を繰り広げるため、テストステロンを過剰なレベルまでつくり出してしまう。
こうしてストレスホルモンを分泌し続けるため、臓器が破壊され死に至る。
ベイカー氏は「アンテキヌスはたいてい夜行性であるにもかかわらず、日中によろめいて体のそこら中から出血しながら、毛が抜け落ちてもまだ、交尾相手を探している雄の姿を見てきた」と話す。
雌の寿命は約2年だが、半分超が1度しか出産せず、6匹から14匹の子どもを産む。一方で雄は最初の誕生日を迎える前に死んでしまうという。
クイーンズランド州にある3か所のエリアだけが、この2種の生息地であることがこれまでところ確認されており、その個体数は、雄雌合わせて250匹以下と推定されている。
両方の種の発見者であるベイカー氏は、たった数十年前の個体数は10倍以上だったと考えているという。(c)AFP