【5月11日 AFP】オーストラリアに生息する有袋類ウォンバットの一部種では、交尾行動の一環として相手の尻を強くかむ行為が頻繁に見られることが分かった。研究者らが10日、発表した。ウォンバットの交尾行動についてはこれまであまり知られていなかったため、今回の研究成果は、絶滅危機にある一部ウォンバット種を救うものとなるかもしれない。

 ミナミケバナウォンバットの繁殖パターンを観察した研究者らは今回、交尾の準備ができた雌は動きが活発になり、最も繁殖力の旺盛なときに雄の尻をかむ行為にでる確率が高いことを発見した。

 研究チームは、ミナミケバナウォンバットの習性を調べることで、世界で最も希少な種の一つである絶滅危惧種のキタケバナウォンバットの飼育下での繁殖を促進させたいとしている。

 クイーンズランド大学(University of Queensland)のスティーブン・ジョンストン(Stephen Johnston)教授は「キタケバナウォンバットの生息数は残りわずか約200匹となっており、この動物の繁殖を可能にすることが、いつの日かこの種が存続する保証となり得る」と語る。「キタケバナウォンバットの飼育下の繁殖はまだなく、ミナミケバナ種でさえ飼育下での規則的な繁殖には失敗している」

 オーストラリアのウォンバット3種が直面している生存の脅威は、捕食性の犬、病気そしてカンガルーとの餌をめぐる争いだ。

 体毛をごっそりとむしり取るほど交尾相手の尻を激しくかむウォンバットの気性の荒さが、習性に関するデータ収集を困難にしていると研究チームは話す。そのため最新の研究結果は「大きな前進」なのだという。

 今回の成果についてジョンストン氏は、動物園や野生保護区でのウォンバット繁殖プログラムの成功率を高めるためのヒントとなり得るとしている。(c)AFP