【5月11日 AFP】東洋と西洋を股に掛けた超近代国家で、時に退屈と言われるほど安全な国──何をしでかすか予測できない米朝2人の指導者による歴史的な初会談の開催場所として、シンガポールは無難な選択といえる。

 米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は10日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長との首脳会談を6月12日にシンガポールで開催すると発表した。史上初の米朝首脳会談となる。

 東南アジアの金融ハブであるシンガポールが選ばれたのは、中立性と安全面、さらにこれまでに多くの国際サミットを開催してきた実績によると観測筋は言う。

 超近代的な都市国家シンガポールの治安インフラは極めて強固で、アジアで最も安全な都市と広くみなされている。一方、メディアや集会には厳しい制限が課されているため、北朝鮮側が望むとみられる管理された環境を実現できるだろう。

 シンガポールはまた米国と北朝鮮の両方と友好的な外交関係を持つという珍しいポジションにある。米国を緊密な同盟国とみなす一方で、在シンガポールの北朝鮮大使館は100%機能している。

 シンガポールと北朝鮮には長い協力の歴史がある。昨年はシンガポールが国連(UN)による新たな北朝鮮制裁を実施したために2国間関係が困難になる場面もあったが、北朝鮮の首都・平壌に初めて開設された法律事務所も、初めてオープンしたファストフードレストランも始めたのはシンガポール人だ。

 またシンガポールという選択は、北朝鮮の主要同盟国である中国にも受け入れられるだろう。中国は、来月の米朝首脳会談に至る事態の推移の中で直接姿を見せてはいないが、強い影響力を持っている。

 トランプ大統領は北朝鮮と韓国の間にある非武装地帯(DMZ)での開催も示唆していたが、9日にこの可能性を排除した。北朝鮮から距離が近い中立的な第三国としてモンゴルでの開催も浮上したが、安全面の理由から排除されたと伝えられている。

 開催地と日程が決まった今、朝鮮半島の完全非核化と、朝鮮戦争(1950~53年)を正式に終結させる平和条約の締結という希望の足掛かりとなる会談でシンガポールがいかにホスト役を務めるかが注目される。(c)AFP