【5月9日 AFP】米司法省は8日、中国のためにスパイ活動を行った罪で中央情報局(CIA)の元工作員、ジェリー・チャン・シン・リー(Jerry Chun Shing Lee)被告(53)を起訴したと発表した。同被告が提供した情報が中国国内のCIA情報網の壊滅につながった可能性もあるという。

 司法省によると2007年に14年間在籍したCIAを退職したリー被告はその3年後、金銭と引き替えに中国情報機関の工作員に「米国の国防に関連した」情報を提供。米市民権を持つリー被告は当時香港に住んでいたが、中国の工作員から情報を要求され、受け取った現金を隠していたという。

 今年1月に逮捕されたリー被告の令状によると、2012年に行われた連邦捜査局(FBI)の捜索で、捜査官がリー被告のバッグからCIAの覆面捜査官や情報提供者に関する名前や連絡先などの情報が記されたノートを発見した。

 リー被告は2012年の任意の取り調べで中国の工作員に機密文書を渡す準備をしたと認めていたものの、逮捕までには6年近くかかった。

 リー被告は外国政府に有益な国防情報を収集・伝達した共謀の罪と、国防関連文書を不法に所持していた罪に問われているが、当局は起訴にこれほど長い時間を要した理由や、同被告が中国の工作員に引き渡した情報の詳細については明らかにしていない。

 中国国内での工作活動について、米情報当局の関係者らの間では中国政府による妨害活動が機能しているという懸念が広がっており、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は昨年、中国が2010~2012年にかけてCIAの中国国内の情報源「少なくとも十数人」を殺害し、6人以上を収監したと報じていた。(c)AFP