【5月8日 AFP】世界の温室効果ガス排出量の8%を国内および海外旅行が占めているとする研究論文が、7日付の学術誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に掲載された。これまでの推計よりも4倍近い数値だという。

 論文によると、数兆ドル規模に上る観光業界において二酸化炭素(CO2)の排出量は急速に増えており、エネルギーを多く使う航空旅行がその要因の大部分を占めているという。

 豪シドニー大学(University of Sydney)のビジネススクールの研究者で論文の主筆者であるアルニマ・マリク(Arunima Malik)氏によると、観光業は2025年まで毎年4%ずつ収益が増えると見込まれており、「観光業は他の経済分野よりも急速に成長するとみられる」という。

 また論文ではCO2排出の抑制のため、炭素税や航空業界におけるCO2排出権取引の導入が必要だろうと結論付けている。

 ここ数十年と同様、観光に関する最大のCO2排出国は米国。このほかドイツ、カナダ、英国などの富裕国が排出国の上位10か国に名を連ねる一方、中国が2位、インド、メキシコ、ブラジルがそれぞれ4位、5位、6位に入っており、中間層が台頭する新興国も排出量の上位に名を連ねている。

 航空機での長距離移動を含む海外旅行は各産業の中で最も成長著しい分野だが、地球温暖化の要因となるCO2の排出削減の取り組みを阻害する恐れもある。

 国際航空運送協会(IATA)によると、航空機の利用客数は2036年には現在のほぼ倍の年間78億人に達する見込みだという。また航空業界は人間が出すCO2排出量の2%を占めており、同業界を国としてみると排出国の順位としては12位に相当する。(c)AFP/Marlowe HOOD