【5月1日 AFP】南北首脳会談を受けて韓国政府が1日、軍事境界線に設置された対北宣伝放送用の拡声器を撤去する中、北朝鮮からの亡命者たちはこの日、K-POPをダウンロードしたUSBメモリーやお米をボトルに詰め、北朝鮮に向けて海へと流した。

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 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領は先週、5月1日から非武装地帯(DMZ)沿いでの「すべての敵対行為を完全に中止」することで合意。これには、拡声器による放送や風船による宣伝ビラ散布も含まれる。

 その一方、北朝鮮で政治犯として収容された経験を持つ脱北者のチョン・グァンイル(Jung Gwang-il)さんら活動家たちは江華島(Ganghwa Island)で、潮の流れによって北へと運ばれることを願いながら、ボトルを海に投げ入れた。

 チョンさんは、北朝鮮の一般民衆から非常に必要とされる情報を奪うことで、韓国政府が北朝鮮の術中にはまっていると話す。

 「金正恩が最も嫌うことは何か?」チョンさんは問いかける。「それは北朝鮮の人々が現実に気付くようになることだ」

 チョンさんら脱北者たちは2年以上、1か月に2回の頻度で食料や現金、薬、メモリーカードを詰めたボトル数百本を海へ投げ込んできた。

 ボトルに詰めた品々が受け取られたかどうかを確かめる決定的な手段はない。しかし、韓国の沿岸警備隊が以前チョンさんに対して、北朝鮮の漁船が頻繁にボトルを回収していると話したという。

 USBメモリーには映画や時事問題に関する番組、K-POPのミュージックビデオが入っている。動画に関しては、肌の露出度が高い服を着た女性ミュージシャンが登場するものをチョンさんが厳選している。

 チョンさんは「これが自由とは何かを示している」「韓国ではまったく問題ないが、北朝鮮では禁止される。これこそ私たちが見せたいものだ」と説明した。

 2015年に実施された調査によると、脱北者の81%が、出国前にUSBメモリーで海外映画を見たことがあると答えたという。(c)AFP