「#MeToo」 日本ではタブー? 被害女性らに立ちはだかる壁
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【4月28日 AFP】歌手のナカジリリンコ(Rinko Nakajiri)さんがレコード契約をさせてくれるという約束で誘われたプロデューサーに最初にレイプされたのは17歳のときだった。当時のリンコさんは、将来のキャリアが台無しになってしまうことを恐れ、沈黙を貫いた。
音楽業界を離れてから20年、現在は東京で主婦をしているナカジリさんは、米映画界の大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)氏に対する、女性被害者たちの告発「#MeToo(私も)」の動きに励まされ、苦しみと向き合おうとしている。
世界では米ハリウッド(Hollywood)から香港まで、女性蔑視と性暴力に関する疑惑が噴出している中、被害者の側が沈黙を強いられることの多い日本では、この動きは比較的わずかな支持しか得られていない。
「日本では、相談したくても話すのはほぼ無理」と、AFPの取材に応じたナカジリさんは言った。「レイプについてものすごい汚名が残っている。周りは、ずっと出さずに我慢してほしいって感じ」
「初めてあったときは夜遅い時間でスタジオの中だった」と話したナカジリさん。それから3年後に音楽業界を去り、今では2人の子どもがいる。「そして、その後何回も。断ったらとか警察に行ったら終わりだと思って…」と続けた。
男性優位社会の日本では性的暴行やセクハラに関する沈黙の文化が今も根強く、被害を公にすることには大きな代償が伴う。
ジャーナリストの伊藤詩織(Shiori Ito)さん(28)は黙って苦しむことを拒否し、昨年、公表に踏み切った。伊藤さんは、安倍晋三(Shinzo Abe)首相に近しい関係にあるとされる元TBS政治部記者でワシントン支局長だった山口敬之(Noriyuki Yamaguchi)氏に、採用話をしようと夕食に誘われた後、レイプされたと訴えている。
勇気を出して沈黙を破ったことで、伊藤さんはインターネット上で激しく攻撃されることになり、殺害の脅迫まで届いた。
AFPの取材に「覚えている最後のことは、すし屋でトイレに行った時のこと」と話す伊藤さん。山口氏にデートドラッグを盛られたのではないかと疑っており、警察は薬物検査をすべきだったと主張している。
伊藤さんは激痛のなかで意識を取り戻した。ホテルの部屋で山口氏が自分の上に乗っていた。何が起きたのかすぐにわかったが、それを整理して理解することができなかったとその時のことについて説明した。