【5月6日 AFP】日当たりの良い古い家に「マシン・ファクトリー(Machine Factory、機械工場)」と書かれた看板が掲げられている。しかし今、この工房が手掛けているのは手仕事だ。ここでは、天才的な音楽家たちが弾いたこともある初期のピアノ「フォルテピアノ」のレプリカが製造されている。

 チェコの首都プラハの約40キロ南東にある村ディビショフ(Divisov)にある工房からは1998年以降、200台におよぶフォルテピアノのレプリカが送り出されている。オーストリアの作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)やヨーゼフ・ハイドン(Joseph Haydn)、ポーランド系フランス人の作曲家フレデリック・ショパン(Frederic Chopin)らによって弾かれたことがあるピアノだ。

「本物であること。これらのピアノを複製するにあたって、これ以外に目的はありません」と語るのは、ピアノ職人のポール・マクナルティ(Paul McNulty)氏(64)。アイルランド系アメリカ人の同氏が小さな丸眼鏡をかける姿は、ジョン・レノン(John Lennon)をほうふつとさせる。

 イタリアのバルトロメオ・クリストフォリ(Bartolomeo Cristofori)が1700年頃に発明して以降、19世紀までにつくられたフォルテピアノは古典派やロマン派の作曲家らに使用された後、金属フレームを使ったより重いモダンピアノに取って代わられた。

 マクナルティ氏は当初ギターを学んでいたが、ピアノの調律師に移行し、さらに工房でフォルテピアノ職人としてのキャリアを歩み始めた。

 年間10~15台のピアノを製造する同氏は、800~6000時間かけて1台を仕上げる。ピアノの値段は、3万ユーロ(約400万円)からで永久保証が付いている。(c)AFP