親を失った子グマを保護し野生に返す、クマに人生ささげた米男性
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【5月10日 AFP】子グマのストライピー(Stripy)とジェイク(Jake)は親を失い保護され、今は哺乳瓶で授乳されているが、囲いの中を楽しそうに跳ね回っている。ベン・キラム(Ben Kilham)さんが囲いに入ると、他の子グマたちは木に登った。
米ニューハンプシャー州の森に暮らすキラムさんのライフワークはクロクマを理解することで、その活動は世界的に知られているだけでなく、人類に対する洞察を得ている。
納屋を改築したキラムさんの自宅は、壁にクマの写真や絵が掛けられ、入り口では木製の小さな3頭のクマが来客を「歓迎」するなど、クマに対する情熱がにじみ出ている。自宅近くには囲いが設置された3ヘクタールの土地があり、ニューハンプシャー州魚類鳥獣保護局(New Hampshire Fish and Game Department)から毎年委託され、親のいない子グマの世話をしている。
キラムさんは、母グマたちが撃ち殺されたり交通事故に遭ったりしたと思われる子グマたちを、生後18か月ごろに野生に返すまで、安全な環境で元気に育つよう世話をしている。
キラムさんはこうした子グマたちだけではなく、野生の大人のクマの観察もしている。そのうちの1頭スクワーティ(Squirty)と名付けられたクマは22歳で、これまでに子どもを11頭産んでいる。
■銃工から転身
以前はガンスミス(銃工)として働いていたキラムさん。生物学者の友人が魚類鳥獣保護局にキラムさんがクマに興味があることを伝え、同局が子グマを委ねたことで、ニューハンプシャー州初のクマの保護施設を開設する道が開かれた。
それから25年、キラムさんはこれまでに165頭のクマを野生に返し、自然の中での1500頭以上のクマとの交流を記録に収めてきた。
キラムさんの責任はクマに対する人々の関心を高めることだ。米国ではいまだクマは恐れられ、狩られ、ニューハンプシャー州に生息する5000~6000頭のクマの約10~15%が毎年狩猟シーズンに殺されている。
再三の助言にもかかわらず、人々はいまだに、養鶏場の安全確保を怠るなど、クマが容易に接近できる状態に食料を放置し、冬眠前に栄養を蓄えようとするクマ、または冬眠明けで餌を探しているクマを引き寄せている。
「クマと共存することは難しいことではない。問題は人々を教育することだ」、「残念ながら、人々を教育するのは、猫の群れを世話するようなものだ。どちらも情報をあまり吸収しようとしない」とキラムさんは語った。(c)AFP/Catherine TRIOMPHE