【4月20日 AFP】石器時代のウシの頭蓋骨に穴が見つかり、この穴が古代の獣医師の施術もしくは外科手術の練習のために開けられた可能性が出てきた。論文が19日、発表された。

 フランスの人類学者チームが英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表した論文によると、ウシの頭部に開けられた穴からは、丁寧に作業が行われた痕跡を確認することができるという。ただ、これがウシを救うための手術だったのか、それとも人への外科処置の練習だったのかについては、まだ明らかになっていないとされた。

 見つかった穴について研究チームは、家畜への穿頭術(せんとうじゅつ、トレパネーション)としては、知られている中で最古の事例を示すものとみられると指摘している。穿頭術は頭蓋骨に穴を開ける処置のことだ。

 論文の共同執筆者で、フランス国立科学研究センター(CNRS)のフェルナンド・ラミレス・ロッツィ(Fernando Ramirez Rozzi)氏は、AFPの取材に「欧州には、穿頭術の跡がある新石器時代の(人の)頭蓋骨が数多くあるが、動物でその跡を確認したのは今回が初めてだ」と話した。

 穴があるウシの頭蓋骨は仏西部の考古学的遺跡で発見された。この地域には紀元前3400~3000年頃に石器時代の集落があった。集落の周囲にウシの骨片が散乱していたことから、ブタやヒツジ、ヤギなどとともに主要な食料源だったことをうかがい知ることができる。

 マッチ箱ほどの大きさのこの穴は当初、ウシ同士のけんかで相手の角で突かれた際にできたものと考えられていた。だが、高解像度のスキャナーでより詳細に調査した結果、そのような強烈な一撃で生じる骨の粉砕や破砕が全く見られないことを、研究チームは発見した。

 また、齧歯(げっし)類の小動物がかじってできた穴にしては形が整いすぎており、さらに頭蓋骨には穴以外の病気の痕跡がみられないことから、梅毒や結核などの感染症や腫瘍によってできたものとも違うことがわかる。