【4月20日 AFP】元自転車ロードレースのランス・アームストロング(Lance Armstrong)氏が、自身の薬物違反をめぐり米連邦政府を欺いたとして損害賠償を求められていた訴訟で、500万ドル(約5億4000万円)の和解金支払いで合意したことが19日に判明した。米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)によると、同氏は不正行為を告発した元同僚のフロイド・ランディス(Floyd Landis)氏の訴訟費用として、165万ドル(約1億8000万円)も負担することになるとされている。

 自転車競技界の元スーパースターであるアームストロング氏は、ドーピングをしながらレースに出場していたとして、当時の所属チームである「USポスタルサービス(U.S. Postal ServiceUSPS)」のスポンサーだった同国郵政公社(USポスタルサービス)への詐欺で来月7日に出廷する予定となっていた。郵政公社とランディス氏は共に1億ドル(約108億円)の損害賠償を求める道を模索していたが、アームストロング氏の弁護士と米司法省との間で調停が行われた結果、厳しい判決が下されることは回避された。

 米司法省の弁護士は今回の取引に関する声明で、「誰も法を逃れることはできない。この合意は、政府を欺いた人間が責任を取らされるということを実証するものである」と発表。アームストロング氏の代理人を務めるエリオット・ピーターズ(Elliot Peters)氏の声明では、この合意によって「プロ・サイクリストとしての現役時代に、運動能力向上薬を使用していたとする2013年の告白をめぐるアームストロング氏への訴訟は、これですべて終了する」ことが明らかになった。

 現在46歳のアームストロング氏は、「訴訟問題が解決し、人生を前に進めることになって喜んでいる」とすると、「これからの人生でたくさんの素晴らしいことに没頭できるのが楽しみだ。私の5人の子どもたちや妻と過ごす時間、ポッドキャストの番組、執筆活動、映画プロジェクト、がんサバイバーとしての仕事、あらゆる競技や大会に情熱を注ぐことなど、楽しみがあふれている」と述べた。

 がんという大病を克服し、自転車ロードレースの最高峰に位置づけられるツール・ド・フランス(Tour de France)で1999年から2005年まで前人未到の7連覇を達成したアームストロング氏は、キャリアを通じて薬物使用のうわさが渦巻いていたものの、ドーピング検査で失格になったことは一度もなかった。

 しなしながら、米反ドーピング機関(USADA)にスポーツ界で最も巧妙な手口のドーピングに関与したと指摘され、その名声は失墜。アームストロング氏は2013年に運動能力向上薬の使用を告白し、自転車競技界から永久追放処分を科されてツールの全タイトルも剥奪された。(c)AFP/Rob Woollard