【4月17日 AFP】シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ(Eastern Ghouta)地区ドゥーマ(Douma)で毒ガス攻撃が行われたとされる問題で、ロシアとシリアが安全上の懸念を理由に、化学兵器専門家らの現地調査開始を遅らせていることが、外交官らの話により16日、明らかになった。米国は、ロシアが現場に「細工を施した恐れがある」と指摘しているが、ロシア側はこれを否定している。

 化学兵器禁止機関(OPCW)のアフメト・ウズムジュ(Ahmet Uzumcu)事務局長は、オランダ・ハーグの本部で同日開かれた非公開の緊急会合で、自ら志願した調査員9人から成る調査班が「まだドゥーマに派遣されていない」と明かした。

 米英仏の3か国は14日、ドゥーマで7日に行われたとされる毒ガス攻撃を受けた懲罰的措置として、シリアへのミサイル攻撃を実施。OPCW調査班は15日に現地調査を開始する予定だったが、現地入りはせずにダマスカスのホテルで当局者らと面会していた。

 ウズムジュ事務局長によると、準備会合に出席したシリア、ロシア両国の政府関係者らは調査班に対し「現地派遣に先立って対応を要する安全上の問題がある」と伝えたという。ウズムジュ氏は、化学兵器の証拠は急速に分解する恐れがあるとして、「可及的速やかに」ドゥーマへの派遣が認められるよう要請した。

 一方、ハーグのロシア大使館で記者会見したロシア政府高官は、ドゥーマに続く道路での地雷除去作業がまだ完了していないと説明。「あす(17日)、国連(UN)治安部隊が経路を検証する。そして18日には、OPCWの専門家らの到着を見込んでいる」と述べた。

 米国からOPCWに派遣されているケン・ワード(Ken Ward)氏は、ロシアが既に現地を訪れている可能性があると指摘。「OPCWの調査班の活動を妨害する意図で、現場に細工を施した恐れがあることを懸念している」と述べた。

 ロシア側はこれを否定。セルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相は英BBCに対し、「ロシアは現場に細工など施していないと保証できる」と述べた。(c)AFP