【4月16日 AFP】シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権にとって、首都ダマスカス東郊の東グータ(Eastern Ghouta)地区を反体制派武装勢力から奪還したことは重要な節目となった。それはまた、政府軍にとって7年に及ぶ内戦の始まりの地である南部ダルアー(Daraa)県へと攻勢の方向を移す道を開いた。

 周辺地域からの相次ぐロケット砲攻撃で多数の死者が出ていたダマスカスの安全を確保したことで、アサド政権は今、政府軍を国内の他地域に進攻させる準備を整えた。

 国内北西部イドリブ(Idlib)県を掌握しているイスラム過激派は今なお脅威ではあるものの、専門家の間では、アサド大統領にとって最も優先順位が高い地域は、2011年に同政権への抗議運動が最初に起きたダルアー県ではないかとの見方が出ている。

 アナリストのファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏によれば、シリア政府軍は、同盟国ロシアの支援を受けて国内55%以上の地域を反体制派から奪還した。

 東グータを制圧した今、アサド政権にとって唯一の危機は、ダマスカス南部にあるヤルムーク(Yarmuk)のパレスチナ難民キャンプを含め、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が今なお制圧している少数の南部地域にある。だが専門家からは、アサド政権にとって真の関心は別の地域にあると指摘する声が上がっている。

 フランス国立パリ政治学院(Paris Institute of Political Studies)のジュリアン・セロン(Julien Theron)教授は、「ISが制圧する地域が残っていることは、アサド政権にとって国内の他地域を再び支配する格好の口実となっている」と主張。アサド政権は、反体制派に対する戦線を強化するための軍の再配置が可能となり、そうした地域に含まれるダルアー県こそが同政権にとって「真の関心事」だとセロン教授は指摘する。

 ダマスカス南方に広がる広大なダルアー県は、ヨルダンおよび、イスラエルが占領しているゴラン高原(Golan Heights)と国境を接しており、米国とヨルダンの支援を受けた非イスラム過激派の反体制勢力が県内の4分の3近くと県都ダルアーの一部を掌握している。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)のシリア問題専門家、トマス・ピエレ(Thomas Pierret)氏も、アサド政権が東グータの次に狙っているのは間違いなくイドリブ県よりもダルアー県とみている。ピエレ氏は「ダルアーの緊急性がより高いのは恐らく経済的な理由と、ヨルダンとの貿易を再開するため」との見方を示している。(c)AFP/Layal Abou Rahal with Rim Haddad in Damascus