【4月12日 AFP】仏パリ・ソルボンヌ大学(Sorbonne University)の前にある噴水の脇に座りながら、クリスチャン・フォコンプレ(Christian Faucomprez)さん(72)は、この大学のキャンパスが社会的・文化的反乱の震源地だった1968年5月のことを回想した。当時フォコンプレさんは、反資本主義の学生として目まぐるしい日々を送っていた。

 建物を占拠した学生たちの寝袋が散乱していた廊下。学生たちは、家父長的な戦後の指導者シャルル・ドゴール(Charles de Gaulle)大統領と対峙し、にらみ合いとなり、パリ中心部はその戦場と化していた。フォコンプレさんは「夜はいつも皆、眠れなかった」といたずらっぽく話し、その混乱に性的解放の希求が伴っていたことをほのめかした。

 あれから50年。髪が白くなったフォコンプレさんは10日、当時と同じ場所を再び訪れ、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が推進する大学入学要件の厳格化に反対するデモに加わった。学生や左派活動家ら数百人は、ソルボンヌ大学からパリ左岸(Left Bank)まで行進した。

 デモ隊は「レジスタンス!」「われわれの仲間を解放しろ!」といった5月革命時に学生逮捕への批判として使用されたスローガンを叫びながら、マクロン大統領の改革への反対を鉄道労働者や年金受給者、公務員らに呼び掛けた。

 1000万人が参加した1968年のストライキや、右派政権に年金改革の撤回を強いた1995年の数百万人規模のデモに比べれば、今回のデモの参加者はわずかだ。しかし、フォコンプレさんは、これを機に何か大きなものが始動したと確信している。「1968年の最初の日も、ほんの数百人しかいなかった。これは、大きく広がる始まりに過ぎない」