【4月12日 AFP】ロシアがバイアスロン競技における自国選手のドーピングを隠ぺいするため、国際競技連盟に口止め料を支払おうとしていた疑惑が浮上した。フランスの新聞が11日、報じた。

 フランスの日刊紙ルモンド(Le Monde)は、世界反ドーピング機関(WADA)の機密文書を引用し、国際バイアスロン連合(IBU)が「あらゆる手を尽くしてロシアに対する手続きが始まらないようにした。腐敗の最大の目的は、ドーピングを行ったロシアの選手を守ることだった」と報じた。2017年末の日付が入った16ページのこの文書は、ロシアとIBUにとって致命的なものになる可能性がある。

 WADAは11日、「IBUの活動調査」をすでに始め、ノルウェーとオーストリアの警察、さらには国際刑事警察機構(インターポール、InterpolICPO)と連絡を取り合っていることを認めた。広報は「この件は薬物違反に関係している」とだけ話し、詳細は明かさなかった。

 IBUも同日、オーストリア・ザルツブルクの本部とノルウェーにある各支部に警察の家宅捜索が入ったことを認め、「執行委員会はこの件を極めて深刻に受け止めており、今後も優れた内部統制と透明性の最高の基準に従って業務に励みます」と声明を発表した。

 ルモンドの報道によると、WADAはIBUのアンデルス・ベッセバーグ(Anders Besseberg)会長とニコール・レッシュ(Nicole Resch)事務局長をロシアが「うまく」標的にしたと考えている。ベッセバーグ氏はノルウェー出身の72歳で、前週、次の会長選挙には立候補しないと表明していた。レッシュ氏は42歳のドイツ人で、この日IBUに「休暇」を届け出ていた。

 またWADAは「生体パスポート、ベッセバーグ氏がロシアの利益を断固として支持していること、2021年の世界選手権の開催権を当初ロシアに与えたこと」を問題視していると付け加えた。

 IBUは2016年、ロシアが国家ぐるみのドーピングを行っていたことが明るみに出る中で、世界選手権の開催地をシベリアのチュメニ(Tyumen)に決めた。ルモンドは「WADAの匿名の情報源によれば、ロシアの連盟は2万5000~10万ユーロ(約330万~1320万円)を連合幹部に支払った」と報道。チュメニは49票中25票を獲得して開催地に選ばれたが、WADAを筆頭に各所からの重圧が高まる中で、その後に開催権を返上した。

 IBUは以前から、冬季五輪でのパフォーマンス向上薬使用に対する対策の遅れを批判されている。さらにメディアでは、テレビ放映権がらみの不正な取引に対する捜査の一環として、いくつかの会社に家宅捜索が入ったことも、この件と関連しているのではないかと報じられている。(c)AFP