【4月11日 AFP】南米ボリビアで、かつては多数いたジャガーが密猟による生息数減少の危機にさらされている。中国におけるジャガーの牙や頭蓋骨の需要の高まりが背景にある。

 研究者らによると、ジャガーは北米からアルゼンチンにかけて生息し、全体では6万4000頭、うち約7000頭がボリビアにいるとみられている。

 だが、中国での闇取引の拡大により、ジャガーの生存は「取り締まりを行わなければ深刻な問題となる」と、環境・水資源省のファビオラ・スアレス(Fabiola Suarez)氏は警告する。

 自然保護活動家らが絶滅を危惧するボリビアのジャガーの将来は、警察による違法取引の取り締まりにゆだねられている。だが、警察はやっと問題の潜在的規模をつかみ始めたところだ。

 環境・水資源省の生物多様性部の顧問ロドリゴ・エレーラ(Rodrigo Herrera)氏によると、北東部ベニ(Beni)におけるジャガーの違法取引は2014年から地元当局に報告され始めたという。同氏は、ボリビアで中国人が増加したことが需要を刺激したと指摘している。

 フアン・エボ・モラレス・アイマ(Juan Evo Morales Ayma)政権は、70憶ドル(約7500億円)相当の公共事業の建設事業者に中国企業を指名。これが、中国からの労働者の流入に拍車を掛けた。

 エラーレ氏によると、ジャガーの牙は8~10センチの大きさで、1本当たり最高100ドル(約1万円)を密猟者にもたらすが、中国では5000ドル(約53万円)まで高騰するという。また、頭蓋骨は取引業者が最高1000ドル(約10万円)で買い取る。中国では粉末にした牙のほか、皮や睾丸も精力剤として珍重されており、違法に取引されている。

 ジャガーは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅の恐れのある野生動物リスト「レッドリスト(Red List)」で準絶滅危惧種に指定されており、その取引は禁止されている。

「貧しい人びとは、1頭のジャガーから最高2000ドル(約21万円)を手に入れることができる。これはかなりの額だ」と、エラーレ氏は話す。世界銀行(World Bank)の最新の統計によると、2015年のボリビアの貧困層の割合は38%に達している。

■中国大使館も異例の呼び掛け

 農家は家畜を守るためジャガーを撃ち殺すことがよくあるが、自然保護活動家らは金銭がそれに拍車をかけること懸念している。

 ボリビア警察はこれまでに、中国宛ての郵便物から400本のジャガーの牙を押収した。

 ラパス(La Paz)の中国大使館も自国民に対し、密輸に関わらないよう異例の警告をしており、「野生動物の違法取引に関する中国とボリビア両国の法律を尊重し、順守する」よう呼び掛けている。(c)AFP/José Arturo Cárdenas