【4月30日 AFP】これは所有権、遺産、革命、そしてラム酒をめぐる壮大な闘いだ。

 ここ数十年、ラム酒の製造販売を手掛けるバカルディ(Bacardi)とペルノ・リカール(Pernod Ricard)は、どちらの商品が真の「キューバン・ラム」なのかを争っている。双方とも、キューバとの強いつながりを主張し、最も有名なブランドである「ハバナクラブ(Havana Club)」の専有権利を求めているのだ。

 この法廷闘争には、商標権と米国の法律だけでなく、ノスタルジーと喪失への深い感慨が関わっている。

 バカルディは、自社が1994年に創業者一族のアレチャバラ(Arechabala)家から買収したオリジナルレシピに基づいて造る「ハバナクラブ」こそが本物であるというマーケティングキャンペーンを米国内で展開。一方の仏企業ペルノ・リカールは、100%キューバ産の材料を使ってキューバで蒸留されている自社製品こそ真の「ハバナクラブ」だと主張して一歩も譲らない。

 バカルディのブランドエグゼクティブ、ロバート・ラミレス(Roberto Ramirez)氏はAFPの取材に対し、「ペルノ・リカールはキューバ政府と結託し、盗んだブランドから利益を得ている」と非難した。

 バカルディは1995年に、プエルトリコで製造した「ハバナクラブ」を米市場で販売し始めた。そのスローガンは、「国を追われ、放浪のなか熟成。永遠のキューバの心」だった。

 アレチャバラ家とバカルディ家は、フィデル・カストロ(Fidel Castro)のキューバ革命後にラム酒製造工場を含む財産を接収され、亡命を余儀なくされた。

 当時バカルディ家は、すでにプエルトリコを含む国外の土地に蒸留所を所有していた。しかし1934年から「ハバナクラブ」の生産を開始し、それ以前からも数十年にわたりラムを製造してきたアレチャバラ家は、一からやり直す資金を持っておらず、米国の商標も1974年に失効した。

 するとカストロ政府のキューバ・ロン(Cuba Ron)社が突如、このブランド名を米商標庁に登録した。しかし、米国の対キューバ禁輸措置のため、キューバから米市場に「ハバナクラブ」を輸出することはできなかった。