【4月4日 AFP】世界最大の同性愛者向け出会い系アプリをうたう「Grindr(グラインダー)」は、利用者に向けて定期的なエイズウイルス(HIV)検査とその結果の公開を促す取り組みで、専門家らの称賛を集めてきた。だが今週、その情報を外部の業者と共有していた事実が発覚したことで非難が殺到し、同アプリのボイコットを呼び掛ける声も出ている。

 米カリフォルニア州ウエストハリウッド(West Hollywood)に本社を置き、1日の世界アクティブユーザー数を360万人と発表しているGrindrは2日、HIV検査結果を含むユーザーの個人情報を、第三者のソフトウエア企業に提供していることを認めた。

 この問題は、交流サイト(SNS)最大手フェイスブック(Facebook)のずさんな個人情報保護をめぐるスキャンダルとも重なる。フェイスブックは、2016年米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)陣営の選挙活動の一環として英企業ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)が何千万人にも上るユーザーの個人情報を入手していたことが明るみに出て以降、極めて厳しい目が向けられている。

 Grindrのスコット・チェン(Scott Chen)最高技術責任者(CTO)は、フェイスブックのスキャンダルから距離を置こうと、自社による情報提供は「業界の慣行」でしかないと説明。データを使用したアプティマイズ(Apptimize)とローカリティクス(Localytics)の2社は単にソフトウエアの最適化業務を請け負っていただけであり、「最高レベルの機密性、データセキュリティー、ユーザープライバシーを要する厳しい契約条件」に基づいて業務を遂行していたと釈明した。

 これに対し市民活動団体やユーザーらは、今回発覚した事実は深刻な信用の裏切りであり、プライバシー侵害に当たると訴えている。また、この問題が報じられたことで、HIV感染予防のために定期検査と性的パートナーへの検査結果共有を促す活動に悪影響を及ぼしかねないと懸念する声も上がっている。

 エイズ医療財団(AHF)は、Grindrによる情報共有を「プライバシー関連法の甚だしい違反」と断じ、「この無責任な慣行の即時中止と廃止」を要求。フランスの啓発団体「AIDES」は、同アプリのボイコットを呼び掛けた。

 ただAIDESは一方で、新しい出会いの前に出会い系アプリで検査結果を公開しておくことは、「HIV陽性の人々が口頭で感染の事実を告げた時点で相手に拒絶されることを避けられる」と強調し、「HIV感染者の受け止められ方やイメージの面での正常化」の一助になるとしている。

 電子プライバシー情報センター(Electronic Privacy Information Center)のナターシャ・ババザデ(Natasha Babazadeh)法務研究員はAFPの取材に対し、Grindrがデータの利用法について透明性を確保できなければ、利用者の信頼を失う恐れがあると指摘。「ケンブリッジ・アナリティカ問題の後、フェイスブックユーザーらがアカウント削除に動いたように、出会い系アプリのユーザーらも同様にアカウントを削除するか、類似アプリの利用を厳密に制限することになるだろう」との見解を示した。(c)AFP/Maggy DONALDSON