【3月30日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は29日、米軍を「早急に」シリアから撤退させる意向を表明し、米政府は中東での戦争で7兆ドル(約745兆円)も浪費していると嘆いた。

 オハイオ州で工場労働者を前に行った大衆向けの演説の中でトランプ氏は、まもなく米軍はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」のかつての支配地をすべて奪還するとの見通しを示した。

 トランプ氏が「わが国はシリアから手を引く、早急にだ。それからのシリアの処理は他者に任せる」と約束すると喝采が起きた。

 トランプ氏はシリアの処理を担当する他者が誰を指すのかは明らかにしなかったが、現在シリアにはバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権を支援するためロシアとイランがかなりの規模の兵力を駐留させている。

 米国はシリア東部に兵士2000人以上を駐留させ、IS打倒のため現地民兵組織と共闘する一方、シリア内戦には不干渉の立場を取ろうとしている。

 トランプ氏が示した米軍撤退の意欲は、今月解任されたレックス・ティラーソン(Rex Tillerson)前国務長官が今年1月に発表した米国の新たな対シリア戦略を公然と無視するものだ。

 ティラーソン氏は米スタンフォード大学(Stanford University)で行った演説で、ISや国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の再起を防ぐとともにイランに「シリアでの地歩をさらに固める」機会を与えないため米軍はシリアでの活動を継続しなければならないと主張し、「現時点での米軍の全面撤退は、アサドを復権させ、シリア国民に対する残忍な仕打ちを続けるのを許すことになる」と述べていた。

 トランプ氏は「わが国は中東で7兆ドルも浪費している。それで何を得た? 何も得ていない」と言明し、米国はこれから国内の雇用創出やインフラ構築を中心に支出していくと約束した。(c)AFP