習氏と金氏、堅苦しい雰囲気をほぐすことはできたのか
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【3月29日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が今週、中国・北京を非公式に訪問し、習近平(Xi Jinping)国家主席と26日に会談したことについて、中朝の国営メディアは28日になってようやく報じた。これらの伝えられた内容には、両国の複雑な同盟関係の現状を知る手掛かりが数多く含まれていた。
天安門広場(Tiananmen Square)のすぐ近くにある人民大会堂(Great Hall of the People)では、李雪主(リ・ソルジュ、Ri Sol-Ju)夫人を伴った金氏と、習主席と白地に黒い斑点模様のワンピースを着た彭麗媛(Peng Liyuan)夫人とが並び、小銃を携えた儀仗(ぎじょう)兵の行進を閲兵した。
国営中国中央テレビ(CCTV)が報じた映像では、閲兵式の後に両首脳による対話の様子が伝えられた。ここでの映像は、習主席が話し、それを金氏が聞いて熱心にメモをとっているような編集が意図的になされていた。
中国国営新華社(Xinhua)通信によると、習氏は金氏を「最高指導者同志」と呼び、両国については「思想と信念を共有するもの」としたという。
他方で両国の指導者夫妻は、舞台芸術を鑑賞し、歓迎の夕食会にも出席した。
独立系の中国政治のコメンテーターのフア・ポー(Hua Po)氏はAFPの取材に対し、習主席を前にした金氏は「非常に謙虚」で、「兄にあいさつしに来た弟」のようだったとコメントした。
しかしこうした温かい歓迎式典が行われたにもかかわらず、「両者は『感情面』で相手を完全に受け入れることができなかったため、会談の全体的な雰囲気は熱意に欠けるものだった」と同氏は指摘している。
習主席は、金政権の核開発やミサイル発射試験に対する国連(UN)の制裁を支持している一方、北朝鮮は昨年、中国で重要な政治的行事が行われている最中にミサイル発射試験を実施。長年にわたる両国の同盟関係が揺らぐこととなった。
独立系シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」北東アジア担当上級顧問のマイケル・コブリグ(Michael Kovrig)氏は、中国政府が「『すべてを水に流す』とするための準備が整っていなかった」ため、金氏を国賓待遇という名誉を持って迎えなかったと分析する。
それにもかかわらず夕食会に彭麗媛夫人のほか、王毅(Wang Yi)外相をはじめとする高官も出席したことは、中国が中朝関係を北朝鮮が望む「党と党の血を分けた兄弟のような関係」から「外務省が所轄する通常の国家間の関係」にシフトしようとしていることをにおわせるものとなった。