【3月28日 AFP】世界最高峰エベレスト(Mount Everest)のベースキャンプに、下半身不随の障害者として世界で初めて自力で到達したオーストラリア人男性、スコット・ドゥーラン(Scott Doolan)さん(28)が27日、ネパールの首都カトマンズでAFPの取材に応え、喜びを語った。

 ドゥーランさんは多くの健常な登山者よりわずかに長い10日間をかけて25日、海抜5364メートルのベースキャンプに到着した。道中、車いすを使える場所では使いながら、過酷な旅をほぼ援助なしで成し遂げた。自らがベースキャンプに初めて到達した下肢障害者となったことについては「恐れ多いことだ」と述べた。

 ドゥーランさんはベースキャンプに到着した瞬間について「その時、息をしようともがいていた。両手で(体を)支えて歩いていたからね。でも、見上げると20人ぐらいの集団が見えたのを覚えている。そこまで到着すると、みんなが歓声を上げてくれて、とても身に余る感じがした」と語った。

 手を使っての山歩きで、5つの手袋がぼろぼろになり、7日目には車椅子の前輪1つが外れてしまった。「途方に暮れて、岩の上に座って、どうするかを考えていた」とドゥーランさん。「断念するか、何か方法を探すか」

 17歳の時にオートバイの事故で脊椎を骨折してからずっと車椅子生活を送っているドゥーランさんは、今回の登山のために8か月をかけて訓練に励んだ。循環器系と体力強化の訓練を毎日行い、上半身を強化してきた。だがその訓練にもかかわらず、今回の行程は予想していたよりも「2倍困難」だったという。

 この旅で体に大きな負担がかかったドゥーランさんは、25日にベースキャンプからカトマンズまで空路搬送され、入院した。レントゲン検査の結果、尾骨に疲労骨折が認められたが、完治する見込みだ。

 ドゥーランさんは今、次の冒険についてじっくりと考えている最中だ。2020年に行われる東京パラリンピックの水泳競技にオーストラリア代表として参加したいとも考えている。(c)AFP/Annabel SYMINGTON