【3月27日 AFP】土地の劣化によって2050年までに5000万人以上に及ぶ大量の移住者が発生するとの報告書が26日、発表された。科学者100人以上がまとめたこの報告書は、生命を支える資源である土地の減少に人類が歯止めをかけなければ、移住者数が7億人に上る恐れもあると警告している。

 土地の健全性に関する初の包括的な評価を示した今回の報告書によると、持続不可能な農業や鉱業、汚染や都市部の拡大などが原因で起こる土地の荒廃により、世界人口の40%に当たる約32億人の福利がすでに損なわれているという。

 地球に暮らす人々全ての食糧の確保と清浄な水や空気を得る機会は、土壌とその上で生育する植物によって維持されている。そのため土地の減少はこれらを脅威にさらすことを意味する。

「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES)」は今回、土地の状態を「危機的」と表現し警鐘を鳴らした。

 IPBESのロバート・ワトソン(Robert Watson)議長は「われわれ人類によって広大な森林と草原が転換され、地球の湿地帯の87%が消失した。人類は過去数百年で地球の地表を激変させた」と指摘した。

 ワトソン議長は、AFPの取材に「土地の劣化と、土壌および植生の生産性の損失により、人間は将来、移住を余儀なくされる。劣化した土地に依存して生活することはもはや不可能になる」とも語っている。

 報告書によると、移住者数が5000万人という最も低い数字となるのは最善のシナリオの場合に限られるとしている。ここでの最善シナリオとは、「人類が持続可能な農業と持続可能な林業を実践するための尽力と、気候変動を最小限に抑えるための試みを続けてきた」ことが想定されていると、ワトソン議長は説明した。

 一方で、移住者数が最高値となる予測は「成り行き(BAU)」シナリオに基づくもので、この場合は地球温暖化の急速な進行が土地の大規模な破壊をもたらし、砂漠化と干ばつを加速する。