【3月23日 AFP】飛行機で旅をする接触伝染病の人は、実際に病気を他人にうつす可能性があるが、主なリスクを負うのは主として左右の席および前後の列の乗客であることが、19日に発表の米国の調査で明らかになった。

 米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究論文では、伝染病患者からの近接距離に基づいて、病気が他の乗客にうつる確率を初めて定量化した。

 研究者らは大陸横断飛行の10便を研究対象とし、乗客の動きを細かく追跡して、SARS(重症急性呼吸器症候群)やインフルエンザのように空中および物の表面に付着した飛沫(ひまつ)によって広がる代表的な呼吸器感染の確率を推定した。

 研究を率いた米エモリー大学(Emory University)とジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)の研究者らによると、「感染している乗客の前後1列、横2座席以内に座っている乗客の感染確率は80%以上」で、「その他の乗客全員の感染確率は3%未満だった」という。さらに、乗務員が感染している場合は、1回の飛行につき乗客平均4.6人を感染させる恐れがあると警告している。

 朗報なのは、公共保健サービスの指針ではさらに進んで、特定の伝染病については患者の2列以内の乗客に検査を受けるよう促していることだ。

 研究に参加していないレノックス・ヒル病院(Lenox Hill Hospital)の救急医療医師ロバート・グラッター(Robert Glatter)氏は、「論文著者のモデルでは、飛行機で病気をうつされるリスクについて、感染患者から前後1列と横2座席以内で増大するとなっており、かつての研究での2列以内よりもリスクは低くなっている」と述べている。

「だが、せきやくしゃみをしている感染患者から3列以上離れて座っていれば、リスクは大幅に少なくなる。これは1人の人が飛行機内でせきやくしゃみをすれば、搭乗者全員が感染可能というこれまでの考えと矛盾するものだ」

 空の旅の乗客が年間30億人であることを考えると、伝染性の病気にかかっている時に旅行するのは「重大な公衆衛生上の問題」になると報告書は指摘している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN