【3月21日 AFP】フランスの国土面積に匹敵する南極の巨大氷河のうち海面上に浮いている部分が、これまで考えられていたよりも大きいとする研究結果が20日、発表された。地球温暖化に伴って氷河がより速いペースで融解すると、海面上昇に劇的な影響を及ぼす恐れが懸念される結果だという。

 南極の氷河のうち最大規模で、流速が速いものの一つであるトッテン氷河(Totten Glacier)は、莫大な量の融解水を発生させる可能性があるため、科学者らは氷河融解を監視する必要性を強く訴えている。

 研究チームは今回、人工的に発生させた地震波を利用して氷河の内部を透視する調査を行い、トッテン氷河の海面上に浮いている部分が当初考えられていたよりも大きいことを発見した。

 夏季の南極に滞在してトッテン氷河を調査した米セントラル・ワシントン大学(Central Washington University)のポール・ウィンベリー(Paul Winberry)氏は「今回の研究では、地面に接していると考えられていた場所の一部で、下方に海があることを発見した。これは氷河が実際には浮いていることを示している」と述べた。

 今回の発見が重要な理由は、トッテン氷河の底部が温かい海水によってすでに浸食されていることが、最近の研究で示されていたからだ。この海水は海中の「入り口」を通過して、数百キロ内陸にまで流れ込んでいるという。

 氷河は、このように岩ではなく海水の上にある部分が増えると崩壊ペースが加速する。水温が上昇している海の上に浮かぶ部分が増えていることは、氷河の融解が最近加速していることの説明になり得ると、ウィンベリー氏は指摘した。同氏はさらに「これは、トッテン氷河が未来の気候変動により影響されやすくなる可能性も意味する」と述べた。

 研究チームを率いるオーストラリア南極局(AAD)のベン・ゴートン・フェンツィ(Ben Galton-Fenzi)氏によると、トッテン氷河にある氷が全て融解すれば、地球の海水面は約3メートル上昇するという。トッテン氷河の流動、速度、厚みなどを測定するための機器は今後さらに12か月間、氷河上に残され、データ収集を継続する。(c)AFP