【3月18日 AFP】イラン人のマスーメ・アテイ(Massoumeh Attaie)さん(35)は8年前、残忍な襲撃を受け永久的な傷を負わされた。だが事件に対する法的措置はとられていない。

 アテイさんは、離婚しようとして義父から顔に酸をかけられた揚げ句、告訴すれば、アテイさんの息子にも同様の罰が下るだろうと家族に脅迫された。だが、イランのイスラム法では、彼女の両目は義父の片目と同等の価値しかない。

「私は正義よりも息子を選びました」と話すアテイさん。自身の選択については忘れるようにし、心が砕かれないようにしているという。

 今月初め、アテイさんら酸攻撃の被害者数人はテヘランのアシアネ(Ashianeh)ギャラリーで、酸攻撃や被害者に対する意識の向上と資金集めのために、自分たちの作品を公開した。

「私は一被害者としてではなく、アーティストとして認識されたい」と、アテイさんは話した。

 イラン第3の都市イスファハン(Isfahan)で暮らす家族から逃れたアテイさんは現在、テヘランで12歳の息子と一緒に生活している。

「この作品展が、私たちのような人々を勇気づけ、家に閉じこもる生活から抜け出し、社会復帰する気力を少しでも与えられることを願っています」とアテイさんは話す。

 イランではこれまで、酸攻撃の急激な増加が繰り返されてきた。

■「私たちの叫びを聞いて」

 酸攻撃のすべてが、女性を標的にしているとは限らない。

 嫉妬した同僚から酸攻撃を受けた被害男性のモフセン・モルタザビ(Mohsen Mortazavi)さんも自身の作品を出品した。

 モルタザビさんのアート作品は、「モアラ(moaragh)」として知られる木片を使った、非常に複雑な技法を用いた自画像だ。

 自画像の半分はモルタザビさんの以前の姿で、もう半分は黒っぽいしみがつけられている。

 モルタザビさんは、「あれが起きた瞬間を表現したかった」「私たちは、自分たちの声や叫び、私たちのようにやけどを負わされた人々の叫びを、一般の人々に聞いてもらいたいのです。私たちが見つけた最良の方法が、アートでした」と語った。

 この作品展で集まったお金は、イランの酸攻撃被害者支援協会(Association of Support of Acid Attack Victims)に寄付された。(c)AFP/Eric Randolph