【3月25日 AFP】カラフルなマスクとコスチュームを着けたレスラーたちが激しくぶつかり合うリングの周りで、観客がはやしたてる。メキシコのプロレス「ルチャリブレ」のなかでも、これは普通の試合ではない。女性レスラー3人が自分たちより体のずっと大きな男性レスラー3人と戦う「男女対決」なのだ。

 メキシコで熱狂的な人気を誇るルチャリブレに20年ほど前から登場するようになった男女戦は、この国の男女関係のメタファーと言えるかもしれない。男性優位の伝統が根深いこの国では毎年、大勢の女性たちが性的暴行の被害にあったり殺されたりしているが、それでも平等の権利を求めて女性たちは闘っている。

「台所に引っ込んでろ!」。スタンドから観客の罵声やヤジが飛ぶ。女性レスラーの「ムーンビーム(Moonbeam)」(42)は怒りもせず、男性ファンが彼女を侮辱するのは「素晴らしい」と言う。「憎まれ口をきかれるのは、私の戦いっぷりがいいということ。彼らを挑発して、ストレスのはけ口を与えているのだから」

 ファンたちは家で自分の妻を怒鳴りつけたり殴ったりする代わりに「フラストレーションを女性レスラーにぶつけて大声を上げる」と、3人の子どもの母親でもあるムーンビームは語る。

 男女対決は「権力闘争」と言う彼女はこの戦いが好きだ。15年間のキャリアで70人近い男性レスラーを倒してきたという記録にも支えられている。