脳の「学習」細胞、13歳以降は発生しない? 定説と異なる研究結果
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【3月8日 AFP】人間の脳内で記憶や学習をつかさどる部位では、およそ13歳で神経細胞の生産が止まる可能性を示唆する研究論文が7日、発表された。
脳内の海馬領域では、化学信号や電気信号を通じて情報を伝達する神経細胞が、他のほ乳類と同様に人間でも、成人期以降も発生し続けるとする見解が定説とされてきたが、今回の発見はこれに異論を唱えるものだ。
神経細胞は、匂いや音といった外界からの刺激に関する情報を、中枢神経系を経由して筋肉や分泌腺に伝達することにより、動物が周囲の環境に対して正しく反応できるようにしている。
論文の共同執筆者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California in San Francisco)のアルトゥーロ・アルバレスブイヤ(Arturo Alvarez-Buylla)氏はAFPの取材に対し、成人と子ども59人から採取した脳の検体を調べたところ、18歳を超える人々の海馬では「若い神経細胞や、分裂する神経前駆細胞などの証拠は発見できなかった」と語った。誕生から1歳までの子どもたちではいくつか発見できたが、「7~13歳ではほんのわずか」だったという。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された今回の論文は「人間の海馬は、胎児の脳の発育期にその大半が発生することを示している」と研究チームは述べている。
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)の神経科学者であるジェーソン・スナイダー(Jason Snyder)氏は同誌に寄せたコメントで、今回の研究結果には「驚いた」と述べ、「物議を醸す発見であることは確実」とした上で、他の研究者らによる確認が必要だと強調した。(c)AFP/Mariëtte Le Roux