【3月1日 AFP】経済危機の悪化で深刻な物資不足に苦しんでいる南米の産油国ベネズエラで、動物園が飼育している動物を殺して他の動物の餌にする事態が発生している。動物同士の共食いも起き、痩せ衰えたピューマ2頭の姿は悲惨な社会状況の象徴となっている。

 ベネズエラでは、原油価格の低迷に伴いハイパーインフレと食料・医薬品の深刻な不足が問題となっている。こうした中、西部スリア(Zulia)州サンフランシスコ(San Francisco)にある動物園では、アヒルやブタ、ヤギを殺して飢えた動物たちの餌にした。

 AFPが最近行った取材に対し、飼育員たちはライオン、ベンガルトラ、ジャガー各1頭と数種類の猛禽(もうきん)類が栄養失調状態だと説明した。

 この動物園は、飢えた動物たちの痛々しい写真が明るみに出た後、今月から閉鎖している。骨が浮き出るほど痩せこけたピューマ2頭の写真は、地元紙パノラマ(Panorama)に掲載され、全国に衝撃を与えた。この2頭はもともと密猟者から救い出されて動物園に保護された経緯がある。動物園に来たばかりの頃は痩せていたものの、栄養状態はその後改善していた。だが、昨今の経済危機で「まるで縮んでしまったみたいだ」と飼育員の一人は言った。

 絶滅の恐れがあるアンデスコンドルのつがいは繁殖計画のためこの動物園に来たが、もう何週間もまともに餌を食べていない。あるおりでは、2羽の猛禽類が別の1羽を食べてしまったという。

 餌にする肉の不足に対処するため、動物園では園内に生息する野生のイグアナや敷地内のラグーン(潟湖)にすむティラピアの捕獲作戦を開始した。

 だが、問題は餌不足だけではない。この動物園では2016年だけで少なくとも40匹の飼育動物が盗まれた。インフレの影響で肉が買えない人々が食べるために盗んだとみられている。国内の他の動物園でも動物の盗難や殺害が相次いでいる。ベネズエラの主要大学が行った研究によると、同国では昨年時点で国民の実に87%が貧困状態にあるという。(c)AFP/ Margioni BERMÚDEZ