700歳の木の根、米美術館のテーブルに 美術作家 杉本博司氏
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【3月17日 AFP】絡まり合い、泥まみれで誰からも必要とされていなかった木の根は、長い間、東京の材木置き場に置かれていた。日本の現代美術作家、杉本博司(Hiroshi Sugimoto)氏(70)が来るまでは。
中世に生きた木の生命維持装置としての役割を終えたその根は今、杉本氏の手によって米首都ワシントンにある現代美術館の1階を光が柔らかく差し込む空間に変化させる役割を担っている。
700歳の根は、杉本氏が新しくデザインして今年2月23日にオープンしたハーシュホーン美術館と彫刻庭園 (Hirshhorn Museum and Sculpture Garden)のロビーでガラスの天板を載せた2つの半円形のテーブルの土台の一部となり、ゴードン・バンシャフト(Gordon Bunshaft)氏が設計したドーナツ状のブルータリズム建築と共鳴している。
「同じものをもう一度作ってほしいと言われても、それは不可能です」。時間の経過を捉える物思わしげな白と黒の映像で「歴史の歴史」を提示する作品の制作に人生のかなりの部分を費やしてきた杉本氏は語る。
「誰かが木を切り倒したら根の方もかなり面白いと気付いて、慎重に掘り出した。ほとんど発掘です。間違いなく、たった一つしかない自然の芸術です」
杉本氏は根を半分に切り分けた。
「切断した根はとても生気に満ちていて新しかったんです。外側はとても古いのですが、生命の、光の力があるのが分かりました」
杉本氏は、子供や来館者らがこの巨大な根のテーブルに飲み物をこぼしたりぶつかったりしても気にしない。むしろ大歓迎だという。「この古びた感じが好きなんです」