家族全員殺そうとした息子を許す父親、死刑執行前の苦悩
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【2月16日 AFP】胸部を9ミリの弾丸で貫かれたケント・ウィタカー(Kent Whitaker)さんは、病院のベッドに横たわりながら、家族を皆殺しにしようとした殺人犯への復讐を誓っていた。
しかし、ケントさんは今、その犯人を死刑から救おうとしている。その死刑囚が実の息子だからだ。
ケントさん(69)はAFPに対し、「罪を許すなどという考えは毛頭無かった」と語る。「何が起きたのか到底理解できなかったが、とにかく誰であれ、あの顔を隠した犯人を痛めつけてやりたいと思っていた。私の人生をめちゃくちゃにしたことに対する報復として」
2003年12月。ケントさんと妻のトリシア(Tricia Whitaker)さん、そして長男と次男の4人は、大学卒業を目前にした長男が提案した、家族揃ってのディナーに出かけた。ディナーを終えてテキサス州ヒューストン郊外のシュガーランド(Sugar Land)の自宅に戻った後、事件は起きた。
団らんは長くは続かなかった。何者かが突然押し入り、4人に向けて発砲したのだ。トリシアさんと次男ケビン(Kevin Whitaker)さん(19)は殺害され、長男も腕を撃たれた。
「信仰が揺らぎ、神への怒りを覚えた。このようなことが起きたというだけでなく、聖書に書かれていた約束と矛盾しているようで疑問を抱かざるをえなくなったことに。しかし神は、事件当日の夜、病院のベッドに横たわる私の前に現れた。そして関係する全ての人を許すという『奇跡』を起こすことを助けてくださった」
「そしてそれは、許すべきは自分の息子だと知るずっと前に起きた」
事件の黒幕が長男のバート(Bart Whitaker)であることがわかったのは、事件から1年後だった。長男は、捜査をかく乱するために意図的に腕を撃たせていた。
長男は実行役の男を雇い、いつの間にか憎しみの対象となっていた家族を皆殺しにするよう依頼していた。100万ドル(約1億円)の遺産を狙った犯行というのが検察当局の主張だ。
事件から7か月の間、長男は父親と一緒に住み続けた。警察が長男を疑うようになってからも、父親のケントさんはずっと息子を信じ続けたのだ。