「牙を抜かれた」サウジの宗教警察、社会に解放感も一抹の不安
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【2月15日 AFP】人通りの多い路上でベールをかぶった女性と親族ではない男性が一緒にダンスを踊る動画が、中東サウジアラビアで激しい論争を巻き起こしている。この動画への対応をきっかけに、同国の宗教警察の影響力が低下しているとして一部から激しい非難の声が上がっているのだ。
男女隔離の徹底的な実施で知られる宗教警察は、正式名称を「勧善懲悪委員会」という。通称ムタワ(Muttawa)と呼ばれ、サウジの道徳の権威として過去数十年にわたって絶大な力を振るってきた。ムタワは、街角やショッピングセンターを見回り、派手なマニキュアを塗った女性を捕らえたり、異性との出会いを求める男性たちを罰したりしてきたのだ。
だが近年、サウジアラビアが立ち上げた一連の改革に伴い、ムタワの力は徐々に弱まっている。逮捕権限も縮小の対象だ。
この歴史的な再編の中で、ムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子は、イスラム強硬派の聖職者たちの政治的役割をさらに縮小させている。
保守主義にどっぷり浸っているサウジ社会において、路上でダンスを踊ることは小さな法律違反ではない。2月上旬にインターネットで出回った男女が街中で踊る短い動画は世論を動揺させ、2人を逮捕しろという声も一部から上がった。
ソーシャルメディア(SNS)上に怒りのコメントがあふれるなか、当局は敏速な対応を誓った。世論の怒りは、ムタワの存在感が薄れつつあること、さらにはムタワの今後の役割が不透明なことに対する保守勢力のいら立ちをあらわにするものだった。
「宗教警察はどこにいるのか?」「何故、黙っているのか?」「黙っているということは、認めたということなのか?」──SNSにはこのような怒りの言葉があふれている。AFPでは何度もムタワに取材を申し込んだが、ムタワからの返事はまだない。