【2月13日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)は13日、平昌冬季五輪のアイスホッケー女子に出場した北朝鮮と韓国の南北合同チームをノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)にノミネートする考えは現時点でないとした一方で、トーマス・バッハ(Thomas Bach)会長の同賞受賞により前向きな姿勢を示した。

 IOCの委員を務めるアンジェラ・ルッジェーロ(Angela Ruggiero)氏は、南北合同チームの平和賞ノミネートを呼びかけたが、広報担当マーク・アダムズ(Mark Adams)氏は組織として「まったく検討していない」とこれを否定し、「IOCの事務レベルではこの件についていかなる検討していない。もちろんメンバーはそれぞれの見解を持つことができる。しかし、議論にはなってないない」と述べた。

 五輪閉幕後、バッハ会長は北朝鮮を訪問する予定となっている。開幕式で北朝鮮は韓国と一緒に行進し、女子ホッケーでは史上初めて合同チームを編成した。北朝鮮の五輪参加が契機となって両国は和解に向けて動き出しており、韓国入りした北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)氏は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領に訪朝を要請している。

 北朝鮮の五輪参加実現に尽力したバッハ会長がノーベル平和賞にふさわしいかと問われたアダムズ氏は「まだ正式な議論は始まっていない」として断定的な言い方はしなかったものの、南北合同チームよりもバッハ会長の方が同賞にふさわしいとの考えが透けて見えた。

■「多くのサポートがある」

 元アイスホッケー選手で五輪金メダリストのルッジェーロ氏は、現在IOCのアスリート委員会で委員長を務めている。同氏は個人的な見解としながらも、南北合同チームはノーベル平和賞にノミネートされるべきだと語った。

「今回のことは象徴的だということで、ほかのメンバーが広くサポートしてくれていると聞いている。これは五輪とは一体何なのかということを示している。個人的なことでもスポーツのことでも国のことでもない。こういった反響があったこと、話し合いが始まったことをうれしく思う。それは当事者間の対話を促した」

 しかし、韓国国民は両国が突然和解することに懐疑的な見方をしており、マイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領は、北朝鮮が「五輪のメッセージやイメージを乗っ取ろうとしている」と批判した。

 12日のAFPのインタビューでバッハ会長は、北朝鮮が五輪をプロパガンダに使用しているという批判を一蹴し、同国が純粋にスポーツという側面から五輪に参加しているという見解を示した。

「これはスポーツだ。IOCはこのことを明確にしている。橋をかけ、ドアを開けるのはスポーツの役割であり、それ以上のものではない」

 南北合同チームは初戦でスイスに0-8で敗れたが、この試合を観戦したバッハ会長の右隣には文大統領が、左側には北朝鮮の派遣団が座った。バッハ会長は試合後、南北合同チームの選手に声をかけている。(c)AFP