「アルプスの空気」をオフィスへ、インドで注目の大気汚染対策
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【2月24日 AFP】深刻な大気汚染に見舞われているインドの首都ニューデリーでは、政府に期待せず自分の力でこの問題に対処しようとする人が少なくない。実業家のカマル・メトル(Kamal Meattle)氏(73)もその一人。メトル氏は、スイスのアルプス山脈(Swiss Alps)と同じくらい新鮮な空気を供給すると自負する設備を、1棟のオフィスビルに導入した。
メトル氏のビル「パハルプール・ビジネス・センター(Paharpur Business Centre)」は、外観はどこにでもあるような現代のオフィスビルだ。しかしその中は、部屋や廊下に7000以上の鉢植えやつる性植物が所狭しと並べられ、まるでジャングルのようだ。
人工芝と壁面緑化が施された温室のテラスには、汚染された外気を浄化フィルターによって「洗浄」するシステムが設置されている。
温室内ではまた、植物によって空気中の細菌や二酸化炭素、その他の有毒な物質が取り除かれ、きれいになった空気を空調設備から階下のオフィスで働く人々に届ける仕組みだ。
その温室についてメトル氏は、「空気タンクの中にいるようなもの」と言う。ビルの監視システムによれば、温室内の微小粒子状物質PM2.5の値はほぼゼロ。外気の観測値は1立方メートル当たり415マイクログラムで、これは世界保健機関(WHO)の基準値の16倍以上に相当する。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業し、アル・ゴア(Al Gore)氏が創設した非営利組織「クライメイト・リアリティ・プロジェクト(Climate Reality Project)」の理事も務めるメトル氏が、オフィスの空気を浄化するアイデアを考え始めたのは何年も前のこと。医師から健康のためには汚染が深刻なニューデリーを離れたほうがいいと言われ、納得できなかったという。
「自分で解決策を見つけたかったし、ニューデリーから去りたくはなかった」とメトル氏は振り返る。
アマゾン・ドットコム(Amazon.com)やサムスン電子(Samsung Electronics)、マイクロソフト(Microsoft)などが入居するメトル氏のビルは、インド政府からニューデリーで最も健康的なビルと評価されている。
メトル氏によれば、このビルで働く人々は血中酸素濃度や脳の機能が改善する他、ぜんそくや目の炎症が減少するなどの恩恵を受けているという。(c)AFP/Annie Banerji and Faisal Kamal