■根絶したはずの麻疹再び…危険は赤ちゃんと高齢者へ

 その結果、CDCによると、2017年には予防接種を受けていないソマリア系の子どもたちを中心に65例の麻疹症例が確認され、全米での年間120例のうち、最大で単一の集団発生となった。

 1998年、反ワクチン運動の活動家、英国人のアンドルー・ウェークフィールド(Andrew Wakefield)氏がMMRワクチンが自閉症を引き起こすとする論文を発表したことで不安が広がった。のちにこの論文はねつ造だったことが判明したが、ウェークフィールド氏は2010年と2011年に地元のソマリア人コミュニティーと会合を持っている。

 麻疹は難聴、失明、脳浮腫、肺炎を起こし得る。CDCによると、麻疹にかかった子ども1000人のうち1~2人が死亡する。

 米国における最近の麻疹の流行は2014年、米オハイオ州のキリスト教の一派アーミッシュ(Amish)のコミュニティーで発生したもので、383例が確認された。また2015年には、カリフォルニア州のディズニーランド(Disneyland)の来場者から感染が広がったと思われる流行が発生し、全米で188例が報告された。

 アリゾナ州の小児科医ティム・ジャックス(Tim Jacks)氏は、「私たちはカプセルのようなものの中で暮らしているわけではありません。店に食料を買いに行ったり、教会や公園に行ったりして人とやりとりすれば、自分を人にさらすことになる」と語る。「そうすると、誰が最も危険にさらされるか。それは(ウイルスから)身を守れない新生児たちがいる家族。そして、その子のおばあちゃんたちです」

 テキサス子ども病院ワクチン開発センター(Texas Children's Hospital Center for Vaccine Development)代表のピーター・ホッテズ(Peter Hotez)氏はAFPに、問題を解決するには、現在18州でワクチン接種に関して個人による選択制が認められているが、その制度をなくすための法整備と、科学者らによる取り組みが必要だと語る。

 カリフォルニアのディズニーランドでの麻疹の流行後、同州では法律を改正し、就学児に対して医学的原因による免除以外が認められなくなり、その結果、予防接種件数は上昇した。

「(ワクチン接種を拒むのは)もはや小さなカルト集団の話ではなく、よく組織された運動」だとホッテズ氏は指摘する。「そうした運動に直接、働き掛ける必要があるのです」(c)AFP/Kerry SHERIDAN