【2月13日 AFP】クロアチアで初めて出版された同性カップルの家族を描いた幼児向けの絵本「My Rainbow Family(私の虹色家族)」には、男の子がスキーを履くのを手伝う2人の母親の様子が描かれている。この本の目的は、厳格なカトリック教徒が多いクロアチアでの人々の態度を変えること。だが先週、同国で行われた子ども向けカーニバルでこの絵本が燃やされるという出来事があり、訴訟へと発展している。

 幼児向けに作られたこの絵本には、2人の父親を持つアナ(Ana)、2人の母親を持つロコ(Roko)という4歳の子ども2人の日常生活が描かれている。

「アナは、寝る前にお父さんたちに本を読んでもらうのが大好きです」。ある挿絵の下にはこう書かれている。

「去年、お母さんのイネス(Ines)とルシージャ(Lucija)は、スキーを初めてするロコがスキーを履くのを手伝ってくれました」「初めのうち、ロコの家族を変わっていると思う人もいました。でも、2人のお母さんたちはロコの大好きなバナナパンケーキを焼いてくれるので、ロコは気にしません」

 この本は子どものいる、または子どもを望むレズビアンやゲイ、トランスジェンダーの人々の手助けをする協会「レインボーファミリーズ(Rainbow Families)」のダニエル・マルチノビッチ(Daniel Martinovic)さん(36)が先月、首都ザグレブ(Zagreb)で出版した。初版は500部で無料、オンラインでも閲覧できる。

「私たちの子どものために作りました。私たちみたいな家族の話を、読ませてあげたかったんです」。IT専門家で3歳の子どもを持つマルチノビッチさんは語る。

 マルチノビッチさんによると、保守的なクロアチアで暮らす子どものいる同性カップルは、偏見や非難、起こりうる暴力的な反応をいまだに恐れているという。

 共著者のイボ・セゴタ(Ivo Segota)さんによると、絵本は両親が同性の家庭で育つ子どものために制作されたが、祖父母と住む子どもや養子、一人親家庭で育った子どもの支えにもなるという。

「(絵本で描かれていることは)どれもクロアチアにある現実です」。同性愛者で生物学者のセゴタさんは話す。セゴタさんはパートナーと子どもを持つことを望んでいるという。

■絵本が燃やされる

 4日、アドリア海に面するスプリト(Split)近郊のカシュテラ(Kastela)で行われた子ども向けのカーニバルで、主催者らが集まった数百人の子どもと親たちの前で、この絵本を燃やすという出来事があった。

 これを受け、出版元の「レインボーファミリーズ」など三つのLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)権利擁護団体は、主催者らを刑事告訴した。

 カシュテラの市長は、カーニバルでは何かしら悪を象徴するものを燃やすのが慣例となっているとして、主催者側を擁護。権利擁護団体側はこの主張を一蹴した。(c)AFP/Lajla VESELICA