ランナー向けアプリの地図に軍の移動ルート、機密漏えいの恐れ
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【1月29日 AFP】世界中のランナーやサイクリストの走行コースを記録し可視化するエクササイズ用アプリの地図に、米軍や同盟国の軍関係者がイラクやシリアなどで使った機密情報に該当する可能性のあるルートが表示されていることが分かった。基地周辺を部隊が移動する際に通ったルートとみられるものもあり、爆弾攻撃や待ち伏せ攻撃に情報が利用される危険が指摘されている。
問題となっているのは、「アスリートの世界ネットワークの直接可視化」をうたう「ストラバ(Strava)」というアプリの地図。世界中のユーザーが走ったコースを1枚の地図上に表示し、通った人が多いコースほど明るくハイライトされる。
国土の大半が明るく表示されている国がある一方、特定の場所だけが際立って明るい国もある。
たとえばイラクの地図は大部分が暗く、ストラバを利用している人が少ないことを示している。しかし、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の掃討作戦のため米軍と有志連合の部隊が展開している複数の基地周辺は、詳細にハイライトされている。
これらの中には、首都バグダッド北方のタージ(Taji)基地やモスル(Mosul)南方のケイヤラ(Qayyarah)基地、アンバル(Anbar)州のアル・アサド(Al-Asad)基地などが含まれているほか、北部や西部に小規模だがハイライトされた場所が幾つかあり、これまであまり知られていなかった軍事拠点の存在を示唆している。
さらに危険なのは、いくつもの道路がつながった状態でハイライトされている点だ。これはストラバのユーザーがアプリを搭載した機器の電源を入れたまま移動していることを意味しており、頻繁に利用するルートの詳細情報が外部に漏れている恐れがある。
アフガニスタンの地図では、首都カブール北方の米軍の拠点バグラム空軍基地(Bagram Airfield)周辺の道路が特に明るく表示されているほか、南部や西部の複数の場所がハイライトされている。
治安アナリストのトビアス・シュナイダー(Tobias Schneider)氏は、シリアでは米軍主導の有志連合の拠点のほか、ロシア軍の拠点も明るく表示されているとツイッター(Twitter)で指摘した。アフリカ・ニジェールのフランス軍の基地などもハイライトされているという。
シュナイダー氏は、健康維持に熱心な兵士たちがうっかり機密情報を漏らしてしまったことを叱責されることになるとの見通しを示した上で、「基地は場所が決まっていて隠すことは難しい。最大の脅威は、移動を追跡されることだ」と述べている。(c)AFP/W.G. Dunlop