【1月28日 AFP】イングランドFAカップ(FA Cup 2017-18)は27日、4回戦の試合が行われ、リバプール(Liverpool FC)は2-3でウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン(West Bromwich AlbionWBA)に敗戦。敗退したリバプールのユルゲン・クロップ(Jurgen Klopp)監督が、賛否両論のあるビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のシステムを改めて支持した一方、イングランドで長い指導歴を持つWBAのアラン・パーデュー(Alan Pardew)監督は、リーグ戦で降格圏に沈むチームが4位を破るという結果にも、試合展開に釈然としない様子を見せた。

 イングランドでは今季、FAカップを中心にビデオ判定が試験運用されており、クレイグ・ポーソン(Craig Pawson)主審はこの試合の前半だけでVARを8回使用。ポーソン主審とロンドンの指令室に待機するVARのアンドレ・マリナー(Andre Marriner)審判は、WBAの得点を取り消し、リバプールにPKを与え、さらにノーゴールと判定されたWBAの得点を認めるという判定の変更を3回行い、試合に大きな影響を及ぼす形になった。

 クロップ監督は「VARでサッカーが変わっていくのは当然だと思う。WBAがゴールを祝い、その後にあれはゴールじゃなかったと言われることが良いかといえば、良いとは思わない。しかし、重要なのは取り消さなくてはならないゴールを取り消すことだ」と語った。

「普段なら、不当な負けを喫した後はメディアのみなさんにPKをもらえなかった場面や、ゴールを決められた場面について解説をしなくてはならない。1月の寒さの中、判定を待たされることがクールかと言われれば、そうではないかもしれない。選手にとっては特にそうだ。しかし、いずれは手順もスムーズになるだろう」

 実際、3回の判定変更のうち2回はリバプールに有利に働いており、VARがなければもっと大差になっていてもおかしくなかった。試合はリバプールがロベルト・フィルミーノ(Roberto Firmino)のゴールで序盤に先制したが、WBAもジェイ・ロドリゲス(Jay Rodriguez)の2得点で逆転に成功した。

 WBAはその後、クレイグ・ドーソン(Craig Dawson)がチーム3得点目を決めたかに見えたが、VARを使った結果、ゴール前の選手がオフサイドだったとしてノーゴールとなった。続けてポーソン主審は、VARを使ってジェイク・リヴァーモア(Jake Livermore)がモハメド・サラー(Mohamed Salah)に対してファウルを犯したと判定し、リバプールにPKを与えたが、フィルミーノのキックはクロスバーをたたいた。

 そして前半ロスタイムのジョエル・マティプ(Joel Matip)によるオウンゴールの場面では、当初オフサイドと判定されたロドリゲスがオフサイドではなかったとVARが判断し、WBAの3得点目が認められた。

 リバプールは後半やや押し気味に試合を進めたが、終盤にサラーのゴールで1点を返すのが精いっぱいだった。クロップ監督も「言いたくはないが、これが現実だ。ウェストブロムの方が勝利にふさわしかった」と認めた。

■WBAの指揮官はVARに不満のぞかせる

 一方、パーデュー監督は「何から始めたらいいか。リバプールのファン、ウェストブロムのファンにかかわらず、これがファンの見たいものだとは思わない。まず、審判とわれわれとのコミュニケーションがない。例えばNFL(アメリカンフットボール)なら、まず異議があり、それから審判が、それなら映像を確認しようということになる」と話した。

「次に認められなかったドーソンのゴールだが、システムのないリーグ戦であれば絶対に取り消されない得点だった。第4審判はオフサイドを取ったが、角にいた私には驚きだ。ずっと見ていたが本当に微妙な差だった。そこで疑問が出てくる。あの程度のわずかな差で、エンターテインメントからゴールシーンを奪うようにするのか。だとしたら心配だ」

「2つ目の場面についても、ジェイクが腕を使ったという主張はある。しかしVARのない普段の試合だったらPKを取られていただろうか。私としては疑問に思う」

「しかし、サラーの件でもっと大きな問題は4分という時間の方だ。ハイテンポの運動量が一気にゼロになる。あの直後、チームではハムストリングを痛めた選手が一人出た。監督として、私は交代を行わなければならず、そしてあの状況で選手たちの気持ちをもう一度高め、集中を切らさないようにしなくてはならなかった」

「プロなんだからそれは当然だという意見もあるかもしれない。わからないが、やはり異常だよ。サイドラインに立つサッカー人として、前半は気持ちの良いものではなかった。不可解な場面が何回かあった」 (c)AFP/Ian WHITTELL