【1月17日 AFP】東欧のコソボで16日、セルビア系の著名政治家オリベル・イバノビッチ(Oliver Ivanovic)氏(64)が走行中の車から銃撃を受けて死亡した。政情不安が続く同地域で、民族間の緊張に拍車が掛かる恐れが生じている。

 セルビア、コソボ両政府は同日、欧州連合(EU)の仲介による関係正常化交渉を1年以上の中断を経て再開していた。国際社会は平静を保つよう呼び掛けており、両政府はいずれも、相手側を事件の首謀者としてあからさまに非難することは避けている。

 社会民主主義政党に所属し、4児の父親だったイバノビッチ氏は、1990年代のコソボ紛争における戦争犯罪で有罪判決を受けたが、控訴裁がこの判決を破棄し、審理を差し戻していた。

 イバノビッチ氏は穏健派の政治家と目され、コソボで多数を占めるアルバニア系との対話を重視しているとみられる一方、コソボをめぐるセルビア政府の政策を公然と批判していた。セルビアは2008年にコソボが独立を宣言した後もコソボを国内の自治州と見なしている。

 イバノビッチ氏はセルビアのコソボ担当省で副大臣を務めた経歴の持ち主で、北大西洋条約機構(NATO)や国連(UN)、さらに紛争後はEUとの対話で重要な役割を担っていた。

 検察当局はAFPに対し、イバノビッチ氏暗殺の容疑者は現時点では特定されていないと述べた。(c)AFP/Tanja Vujisic