【1月12日 AFP】2018年サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)を開催する各都市の自治体が、数千もの野生化した動物に関する政府からの捕獲命令に従う中、多くの野良犬が殺されている事態に直面している。同国下院議員のウラジーミル・ブルマトフ(Vladimir Burmatov)氏が11日、政府系メディアで明らかにした。

 下院の環境保全委員長でもあるブルマトフ氏は、「動物保護団体からたくさんの訴えが出ていることに加え、数多くのW杯開催都市で野生動物の射殺や安楽死が大量に行われていることが、心ある市民から報告されている」と訴えた。

 ロシアではペットの去勢が積極的に行われておらず、それが原因で増える一方の野良犬たちが各都市でみられ、その一部は凶暴化したり餌をねだったりしている光景が当たり前となっている。先月にはビタリー・ムトコ(Vitaly Mutko)副首相が、W杯開催地で野生化している動物は約200万匹にも上ると発表し、各自治体に対して人道的に問題を解決するように要請していた。

 環境保全委員会はスポーツ相のパベル・コロプコフ(Pavel Kolobkov)氏宛てに公式書簡を送り、各開催都市で「野生動物の大量殺処分」が行われていると警告したことに加え、各自治体に対して「死や損傷、負傷を引き起こさない人道的な方法」を用いることを要請した。また野犬に関しては、仮施設に収容して去勢することは、殺処分するよりも費用がかからないことや、ロシアのイメージを改善につながると忠告したという。

「こうした由々しき事態は止めなければならない。わが国の名声が危機にさらされている。われわれは道で動物を大量に殺したり、血だらけの動物を車に投げ入れて街中を走り回ったりするような野蛮な人種ではない。同程度の費用を投じれば、動物の捕獲や予防接種、去勢、施設への収容はたやすいものだ」とブルマトフ氏は述べている。

 これに対してコロプコフ氏は、世間から批判を受けることを避けるために人道的な方法を用いるように各都市に指示したとメディアで伝えられている。今夏に開催されるW杯は、ロシア西部に位置するカリーニングラード(Kaliningrad)から東部エカテリンブルク(Yekaterinburg)まで計11都市で行われる。(c)AFP