【1月10日 AFP】口から飲みこみ、胃の中で約1週間にわたって抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬の混合薬を放出する「ミニ与薬ケース」を開発したとの研究結果が9日、発表された。薬を毎日服用する負担の軽減に向けた一歩となる可能性のある成果だという。

 現時点ではまだブタを用いた動物試験の段階にあるが、この小型機器はAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)を引き起こすHIVなど、慢性疾患への薬物治療を受けている患者にとって服薬計画の順守を容易にするための最新の試みだ。

 薬を決められた通りに服用する服薬順守は、複数の薬を一生涯、毎日服用しなければならない患者にとっては大きな課題となる。抗レトロウイルス治療(ART)に関しては、服薬順守率は約70%と推定されている。ARTはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を抑える治療で、ウイルスを殺傷することはない。

 薬の服用を忘れると、HIVの再増殖によるエイズ発症や、服用中の薬剤に対する耐性が発生するなどのリスクを負うことになる。その場合、より高価で、患者への負担も大きくなる薬剤への切り替えが必要となることも考えられる。さらに、薬の飲み忘れは、非感染者の性交渉パートナーへのHIV感染につながる恐れもある。

 今回発表された最新の研究では、カプセル状の小型機器が用いられ、外殻が胃の中で溶解すると、内部に折り畳まれていた6本の腕が幅約4センチの六角星のような形に展開する。これら腕にはエイズ薬の「混合薬」のような数種類の薬剤を一度に内包できる。

 この「ミニ与薬ケース」は胃の中にとどまるように設計されており、胃と小腸の間にある幽門弁を通過できないが、食物が消化器官を通る妨げにはならないくらいの大きさになっている。薬剤の放出が完了した時点で機器は分解され、体内から排せつされる設計だという。

 研究チームは3種類の抗HIV薬からなる混合薬を機器に入れ、人と似たような構造の胃を持つブタで試験を行った。