1歳児の「飛び降り巻き添え死」で教派対立が浮き彫りに ウクライナ
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【1月7日 AFP】ウクライナ南東部ザポリージャ(Zaporizhia)で昨年12月31日、酒に酔った状態で8階建ての集合住宅から飛び降りた男性に、1歳の男児が押しつぶされて死亡した。この男児の死を機に、ウクライナ正教の分断が浮き彫りになっている。
地元メディアによると、市内のロシア総主教庁系ウクライナ正教会は、対立するキエフ総主教庁主導の正教会で洗礼を受けたとの理由から、男児の埋葬を拒否。これに怒った男児の父親が司祭を殴る騒ぎがあり、両教派の間で論争を引き起こしている。
ウクライナ正教は1991年のソ連崩壊後、ロシア総主教庁系とキエフ総主教庁系に分裂した。約4年間で1万人以上が死亡しているウクライナ東部での親ロシア派勢力と政府軍の戦闘を受けて、両教派の対立は深まっている。規模はロシア総主教庁系の方が圧倒的に大きい。
男児は父親に連れられて集合住宅から出てきたところで、飛び降りた男性の巻き添えになる形で死亡した。男児の家族はキエフ総主教庁系正教会に属している。
父親がニュースサイト「Forpost」に語ったところによると、家族がロシア総主教庁系の司祭に男児の埋葬式を依頼したところ、司祭はこれを断り、「お子さんは(ロシア総主教庁系の)洗礼を受けていない。あなた方の教会は偽物だ」と告げた。父親は「妻は泣きながら司祭の前でひざまずいて懇願したものの、応じてもらえなかった」と話した。
司祭はその後、父親から殴られ、教会内で小競り合いが起きたため、家族は追い出されたという。両親は最終的に男児が洗礼を受けた教会に遺体を運び、埋葬式を行った。
後に司祭は、教義にのっとり断るしかなかったと語っている。(c)AFP/Dmitry ZAKS