【1月4日 AFP】ばかばかしさと誇張は、政治風刺の2大要素だ。だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領と「偽ニュース」の時代、この二つはもはや効力を失ってしまったようだ。コメディアンやトークショーの司会者たちは、笑いを取るためにあの手この手を使わざるを得なくなっている。

 米国の風刺サイト、「ジ・オニオン(The Onion)」や「ザ・フリップサイド(The Flipside)」、「ボロウィッツ・リポート(Borowitz Report)」などは、事実を公然とあざ笑い、ニュースを面白おかしく曲解してユーモアを利かせることでその名を馳せている。

 こうした手法は本来、本物のニュースとの対比で有効だったが、トランプ大統領のツイッターアカウントの登場と偽ニュースサイトの激増で、その境界はあいまいになっている。

 コメディアンのアンディ・ボロウィッツ(Andy Borowitz)氏は「現実のばかばかしさが、想像力で思いつくあらゆるものを完全にしのいでいる」と言う。

「現状のばからしさと張り合うなんて無駄なことだ」と考えるボロウィッツ氏だが、人々が笑いを必要としているのがこれまでになく明らかなのは、「われわれを取り巻く状況があまりにも悲惨だからだ」と語る。

 だが、ボロウィッツ氏によれば、トランプ氏の前任のバラク・オバマ(Barack Obama)氏が大統領だった時代には、風刺家の仕事は今よりも努力が必要だった。なぜならば「経済は向上し、ホワイトハウスにスキャンダルは皆無で、わが国の大統領が国際的に広く尊敬され、世界における米国のイメージを改善していた」からだ。

 この「偽ニュース」の時代にあって、米誌ニューヨーカー(New Yorker)オンライン版のボロウィッツ氏のコラムは、風刺である旨を明示し、ユーモアのコーナーに掲載されている。同氏の冗談が本物の報道と間違われないためにだ。