【12月28日 AFP】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は27日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から残虐行為の標的とされてきたイラクの少数派ヤジディー(Yazidi)教徒の戦闘員らが今年6月、ISから奪還した地域で民間人52人を虐殺していたと告発した。

 HRWの報告書に掲載された被害者親族らの証言によると、ヤジディーの戦闘員らは今年6月4日、男性、女性、子どもらを拉致し、その後虐殺したとみられるという。また殺害されたのはイスラム教スンニ派(Sunni)部族の8家族とみられ、イラク北部にある同国第2の都市モスル(Mosul)で発生していたISと政府側部隊の戦闘から避難していたという。

 ISは2014年に北部シンジャル(Sinjar)一帯を掌握すると、異端者と見なしているヤジディー教徒に対する残虐行為を開始。クルド語を話すヤジディー教徒の男性の多くが虐殺されたほか、女性や少女は性奴隷として拉致され、少年は軍事教練キャンプに送られた。国連(UN)はこれらの行為をジェノサイド(大量虐殺)に相当すると非難した。

 イラクのクルド当局は今月、ISに拉致されたヤジディー教徒の女性と少女およそ3200人が今なお行方不明になっていると明らかにしている。

 HRWの中東担当部門のラマ・ファキ(Lama Fakih)副部長は、「ヤジディー教徒が過去に残虐行為を受けていたからといって、ヤジディーの戦闘員らが他の部族を虐げることが許されるわけではない」と語った。(c)AFP