【12月20日 AFP】23日に行われるレアル・マドリード(Real Madrid)とFCバルセロナ(FC Barcelona)の伝統の一戦「エル・クラシコ(El Clasico)」は、史上初めてランチタイムの午後12時(グリニッジ標準時、現地時間同日午後1時、日本時間同日午後9時)にキックオフされる。これはスペインリーグがアジア市場の関心、そして金を意識しているためだ。

 ほかのどの試合でも見られないスター選手の競演、あるいはマドリードとカタルーニャ(Catalonia)の文化の違いに根差す、ピッチ内外での長年の激しいライバル関係といった魅力を持つクラシコは、リーグによれば世界一多くの人が見るクラブチームの試合で、世界中で6億5000万人が視聴するという。

 リーグのチーフ・コミュニケーション・オフィサー(CCO)を務めるホリス・エベルス(Joris Evers)氏は「われわれはぜひアジアのファンに、彼らにとってちょうど良い時間に、レアルとバルセロナの直接対決を見る機会を提供したいと考えています」と話す。

 バルセロナ大学(Barcelona University)で教鞭を執り、スペインサッカーのお金の話に詳しい経済学教授も「スペインサッカーをアピールする理想的なショーウインドー、看板試合です」と話している。

 キックオフが早い理由は、莫大な額の放映権ビジネスの拡大だけでなく、高額の契約を結ぶスポンサー企業のためでもある。例えばバルセロナは2016年、日本のインターネット通信販売大手の楽天(Rakuten)と、4年総額で最低2億5800万ドル(約290億円)の契約を結んだ。

 同教授は「彼らは国際市場で、特にアジアで商品を売りたいと考えています」と話す。スポーツ産業のコンサルティング企業ニールセンスポーツ(Nielsen Sports)の専門家が行った分析によれば、昨季の1回目のクラシコの広告媒体としての価値は、4250万ドル(約48億円)に達したという。

 またエベルスCOOは「今回のクラシコはマドリードで1時、上海で20時、ジャカルタで19時、ニューデリーで17時半に始まります。どこもリーガのファンが数多くいる町で、そしてアジアの各地でクラシコ関連のイベントが開催されます。われわれはそうした取り組みを通じて、今いるファンをもっと熱烈なリーガのサポーターにし、同時に新規ファンを取り込みたいと思っています」と話している。

 こうしたイベントは、イングランド・プレミアリーグにアジア市場の開拓で後れを取り、資金力で差をつけられているという認識をスペインリーグが持っている表れでもある。国内外を合わせた放映権料は、プレミアリーグが推定39億ドル(約4400億円)なのに対し、スペインは19億ドル(約2150億円)にとどまっている。

 ただし先述の教授は、スペインリーグはアジア市場だけではなく、南米市場も狙うべきだと考えている。南米には、文化や言語が近い、あるいはアルゼンチンのリオネル・メッシ(Lionel Messi)やウルグアイのルイス・スアレス(Luis Suarez)ら南米のスターが数多くプレーしているという、スペインにとっては有利な点がある。

「リーガは南米に目を向け、勝負に出なければなりません。南米には新興国が多く、購買力の高い中産階級が増え始めています」 (c)AFP/Kieran CANNING