【12月19日 AFP】オーストリアで18日、中道右派・国民党(OeVP)と極右・自由党(FPOe)の連立政権が発足し、首都ウィーンのホーフブルク王宮(Hofburg Palace)では、自由党に所属する閣僚らが笑顔で就任宣誓を行った。一方、王宮の外では寒空の中で約5500人がシュプレヒコールをあげたり、プラカードを掲げたりして抗議する姿が見られた。

 オーストリアは富裕国ながらも国内では移民問題などで不満がたまっており、およそ2か月前に行われた総選挙では有権者の右傾化が見られた。

 その結果、移民に厳しく臨みオーストリアを偉大な国とすると主張してきたセバスティアン・クルツ(Sebastian Kurz)首相(31)が率いる国民党と反移民を掲げる極右の自由党との連立政権が誕生。

 副首相に就任した自由党のハインツクリスティアン・シュトラッヘ(Heinz-Christian Strache)党首(48)は昨年、難民に門戸を開く政策を打ち出していたドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相を「欧州で最も危険な女」などと批判したほか、移民が原因で欧州の「イスラム化」や「中期的な内戦」につながると警告している。自由党は内相、国防相、外相を送り出している。

 一方、ホーフブルク王宮の外では「恐怖の内閣」「ナチスの支配を許すな」などと書かれたプラカードを掲げて抗議する人たちの姿も見られた。

 警察のヘリコプターが上空を旋回し、近くで放水銃を搭載した車両が待機する中、抗議デモ参加者の一人、クラウディアさん(45)はAFPに「これからは極右の内相と国防相が権力のハンドルを握って国をコントロールすることになる」と懸念を示した。自由党の党員の多くが、決闘や汎ゲルマン主義への傾倒で悪名高い、19世紀に発足した複数の右派学生組織のメンバーであることを挙げ、「100年前に逆戻りしたようだ」と述べている。

 夫がナイジェリア人だというカタリーナさん(38)も、移民に対する憎悪が増長されると危惧する。「新政権は移民への給付金を打ち切ると言明している」「この国は私が暮らしたい場所ではありません」

 さらに抗議運動に拍車をかけているのが、新政権が財政を維持しながら減税を目指すとして大学の授業料値上げを打ち出していることだ。

「もちろん反移民的な発言は良いことではない。でも、多くの学生たちは何をおいても、生活水準が脅かされることへの怒りを示すために、ここへ来ている」とルーカスさん(21)はAFPに語った。(c)AFP/Philippe SCHWAB