【1月3日 AFP】靴づくりの技術を習得するために十数年前に渡英した福田洋平(Yohei Fukuda)さん(37)は、それまで主に欧州で盛んだった伝統的な「ビスポークシューズ」の文化を日本がけん引する日が来るとは思ってもみなかった。ビスポークシューズとは、顧客の足に合わせてオーダーメードされる靴のことだ。

 整った口ひげを蓄え、シャツとネクタイの上に濃紺の作業用エプロンを着てAFPの取材に応じた福田さんは、ビスポークの工房がここ数年、日本国内で増えていると語る。

 福田さんによると、東京には現在、少なくとも40軒の靴工房があり、日本全体では100軒に上る可能性もあるという。

 革靴をオーダーメードする文化はこれまで、欧州の職人らがけん引してきた。しかし、日本でも2000年代初頭に高級靴への嗜好(しこう)が高まり、それに併せて靴職人を養成するための教室も国内で急増した。

 福田さんの工房は、仏パリのシャンゼリゼ通りに並び称されることもある東京・表参道にほど近い場所にある。

 工房内に機械は一つもなく、顧客の足のサイズの測定から靴底を取り付ける繊細な作業に至るまで、すべて手作業で行われている。

「一足の靴を仕上げるまでに120~140時間かかる。年間80足ほどの靴を作る」と話す福田さん。より速いペースで作ることは望んでいないが「良い靴は作りたい」と力を込める。

 福田さんの工房で靴を注文する客も作業を急かすことはせずに、100%カスタムメードの品質の高い製品の完成を待つ。これらの手作りの靴の値段は一足あたり数十万円と決して安くはない。