【12月7日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が、これまで長きにわたり実施が延期されてきた米国政府によるエルサレムの首都認定および大使館移転を正式に表明したことで、米国の中東和平政策が頓挫する恐れが出てきた。トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)上級顧問が、イスラエルとパレスチナの間の和平合意を目指してこの難しい問題に取り組んできたが、今後状況はさらに複雑化する見通しとなった。専門家らが現状を分析した。

 トランプ氏は6日、米首都ワシントンのホワイトハウスでの演説で、「和平交渉を進めるための、長年後回しにされてきた一歩だ」として、エルサレムをイスラエルの首都に認定する方針を表明した。中東諸国からの警告や欧州の同盟国からの訴えを押し切る形での発表となった。

 しかし中東のアナリストらは、この米国動きが「和平」というトランプ氏の言葉とは真逆に作用する恐れがあると指摘する。

 米首都ワシントンにあるシンクタンク「新米国安全保障センター(Center for a New American SecurityCNAS)」の中東安全保障プログラム(Middle East Security Program)責任者のイーラン・ゴールデンバーグ(Ilan Goldenberg)上級研究員は、今後の流れについて「最良のシナリオは、単にトランプ氏の和平努力が頓挫するだけ。最悪のシナリオは、広範囲な抗議行動や大規模な暴動まで発生すること」だと語る。

 ゴールデンバーグ氏は、米政府の発表によって、東エルサレムを最終的なパレスチナ国家の首都とすることを理念に掲げるパレスチナ解放機構(PLO)のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長や、その他のアラブ諸国の指導者たちが困難な立場に置かれることになると話す。その理由は「アッバス議長やアラブ諸国の指導者の中の誰かが、この件に政治的に関与できるとは思えない」からだという。

 トランプ氏の発表から間もなく、アッバス議長はテレビ演説で「嘆かわしく、容認できない」とのコメントを発表。米国はもはや和平交渉の仲介役としての役割を果たすことができないと非難した。