(※この記事は、2017年12月6日に配信されました)

【12月6日 AFP】インドネシア・スマトラ(Sumatra)島に生息する希少動物のスマトラトラが、ヤシ油農園を開発するための森林伐採によって絶滅の淵に追いやられているとの研究論文が5日、発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文によると、威風堂々とした肉食動物のスマトラトラはすでに周辺のインドネシア・ジャワ(Java)島やバリ(Bali)島から姿を消しており、現存する保護区が縮小を続けるなら、その存続の可能性もますます小さくなるという。

 今回の研究で明らかになったのは、スマトラトラの生息地が2000年~2012年で17%縮小し、野生に生息する成獣の推定個体数も742頭から618頭に減少したことだ。

 1990年から2010年までの間に、スマトラ島は原生林の40%近くを失ったが、残された生息地も同様に破壊が進んでいる状況にあり、地理的に隔絶された小規模森林への細分化が進行している。

 論文の主執筆者で、カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California at San Diego)の大学院生のマシュー・ラスキン(Matthew Luskin)氏は「広大な原生林が損なわれていることにより、スマトラトラが絶滅に一歩近づいている」と話す。

「スマトラトラの下位個体群も著しく断片化しており、細分化されたそれぞれの森林で種としての絶滅に陥る危険性が大幅に増している」

 専門家らは長期の存続が可能な個体数の限界値を繁殖可能な雌30頭と考えているが、トラが生息地とする森林でこれだけの頭数が生息できるほどの広さがあるのは2か所しか残っていない。

 ラスキン氏と共同研究者2人のチームは今回、1年かけてスマトラ島の人里離れた森林地帯を歩いて横断し、トラや他の大型動物がそばを通った時に自動的に撮影するカメラとビデオを数百台設置した。

■明るい知らせも

 研究チームは収集したデータに基づき、トラ1頭当たりの行動範囲を約400平方キロと推算した。個々のトラは独特の縞模様で識別できた。

「これは、インドなどの他地域のトラの行動圏に比べてはるかに広く、スマトラトラが生存のためにより広い保護区を必要としていることを示している」と研究者らは述べた。

 今回の研究を通じて、明るい知らせが一つあった。

 自動カメラで収集したデータが未開発の原生林におけるトラの密度の上昇を明確に示していたのだ。データからは、伐採が行われている森林の中よりもその密度が約50%高くなっていること分かった。

 今回の研究について、論文の共同執筆者で米野生生物保護団体「サンディエゴ・ズー・グローバル(San Diego Zoo Global)」のマティアス・トブラー(Mathias Tobler)氏は「残された原生林地帯の保護がこれから極めて重要になる」と指摘した。

 最も有名なトラの保護区は、スマトラ島北部にあるグヌン・レウセル国立公園(Gunung Leuser National Park)だ。(c)AFP