【12月4日 AFP】2018年夏に開催されるサッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)で、日本対セネガル戦などが行われるエカテリンブルク・アリーナ(Yekaterinburg Arena)は、両ゴール裏で観戦する観客が、スタジアムの外の空き地に張り出した仮設スタンドから試合を見つめることになる。

 収容人数が国際サッカー連盟(FIFA)の基準を満たしていなかったため、仮設スタンドが建設されることになったのだが、増設部分はピッチから遠い上、屋根もないため直射日光や雨には無防備。さらに、不幸にも仮設スタンドの最上段のチケットしか入手できなかった観客は、円形の屋根の外側から直接外を見下ろすことになる。

 英紙ガーディアン(Guardian)は困ったように、スタジアムそのものが「宇宙」から来たようだと表現。米紙USAトゥデー(USA Today)は「こんなに恐ろしいものは見たことがない」と悲鳴を上げている。

 ところが、建設を請け負った会社には、この42メートルの高さの仮設スタンドがなぜか魅力的に見えているようだ。会社の総責任者は「大きな国際大会を開催するスポーツ施設では、ごく当たり前のやり方です。それに、スタジアムは市の中心部にありますから、エカテリンブルク(Yekaterinburg)を一望する絶景が楽しめますよ」と話している。

 さらにこの責任者は、仮設スタンドは「高い柵」で囲うので落下の心配はまったくないとしている。スタジアムはW杯に合わせて3万5000人規模に拡大されるが、大会が終わった後は仮設スタンドが撤去され、2万7000人収容に戻るという。

 エカテリンブルクは、W杯が開催される12都市のうち最も東に位置する町で、約1か月にわたり行われるサッカーの祭典の開催場所に選ばれたときから、築60年のこのスタジアムには国外メディアの懐疑のまなざしが向けられていた。

 それでも、ロシア文化の多様性をアピールしたい政府は、ウラル(Ural)地方のエカテリンブルクを開催地に選んだ。この町は帝政ロシア時代に炭鉱の町として栄え、ボリス・エリツィン(Boris Yeltsin)元大統領はこの地域でキャリアを築いた。

 約150万の市民が暮らす堅実な工業の町には、FCウラル(FC Ural Sverdlovsk Oblast)という地元クラブがある。何回もの改名を繰り返し、今では単純にFCウラルとだけ呼ばれるようになったこのクラブは、2013年からロシア・プレミアリーグ(1部)に昇格したものの、ソビエト連邦時代は中堅クラブとして過ごしており、2万7000人収容のスタジアムは身の丈に合っているといってよかった。

 それでも、W杯のグループリーグの試合を開催できるのは「3万人以上」とFIFAの規定にしっかり明記されており、グループリーグの4試合を開催する予定のエカテリンブルク・アリーナは、その基準に少しだけ届かなかった。

 このスタジアム特有の問題もあった。前述の建設会社によると、スタジアムは文化遺産に登録されており、原型のまま保存することが義務づけられているため、単純にスタジアム全体を改修するわけにはいかないのだという。

 それでもFIFAは、町の方針に同調するだけでなく、問題のユニークな解決方法を称賛し「仮設席を採用することで、伝統あるスタジアムの形状を保持し、同時にW杯後の維持コストを抑えることができます」と話している。

 安全面の不安も一蹴し、「現地査察を複数回行い、詳細な報告書も作成されています。それによれば、エカテリンブルク・アリーナはすべての安全、保安要件を完全に満たしています」と話している。

 建設会社によれば、スタジアムは11月末時点で「90パーセント」出来上がっていて、2017年中には工事が完了するという。

 エカテリンブルク・アリーナで開催されるのは、以下の4試合となっている。

6月15日 エジプト対ウルグアイ

6月21日 フランス対ペルー

6月24日 日本対セネガル

6月27日 メキシコ対スウェーデン

(c)AFP/Dmitry ZAKS